連邦政府、次世代小型モジュール式原子炉の研究への投資発表、洋上風力も推進

(ベルギー)

ブリュッセル発

2022年06月01日

ベルギー連邦政府のアレクサンドル・ド・クロー首相は5月24日、次世代の小型モジュール式原子炉(SMR)に関する研究に今後数年間で1億ユーロを投資すると発表(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。連邦政府は3月18日にロシア・ウクライナ情勢などを受け、化石燃料依存からの脱却を加速し、エネルギーの自立性と持続可能な発展を目指す計画を発表し、国内で稼働中の7基の原子炉のうち、2基の稼働を10年間延長する決定(2022年3月24日記事参照)を行っていた。連邦政府は、既存の原子炉に比べ、SMRが小型で工期が短く、また安全性が高く、排出される放射性廃棄物の量も少ないという点を評価しており、既に3月18日の発表でSMRへの投資計画を発表していた。今回、SMRの研究を主導するベルギー原子力研究センター(SCK・CEN)でのスピーチで、首相があらためて言及したことで、政府のSMR開発への高い関心と意向を示すかたちとなった。

ド・クロー首相は原子力分野の研究強化について、化石燃料からの脱却を強化し、2050年までにカーボンニュートラルを達成するという目標を後押しするとともに、ベルギーが未来のエネルギー技術のリーダーとなることに貢献すると、その意義を強調した。また、ベルギーの将来的なエネルギーミックスについて、太陽光発電や風力発電、水素などの再生可能エネルギーとともに、持続可能な次世代の原子力発電を活用していくことにも言及した。

SCK・CENは、850人の職員を擁するベルギー最大の研究機関の1つで、原子力技術を用いたがん研究のほか、原子力施設の安全性、核医学の発展、放射線防護などの研究を行っている。ベルギー連邦政府の決定を受け、SCK・CENでは今後4年間、年間2,500万ユーロをSMRの研究開発に充てる。

洋上風力発電では、国際的な協力も推進

ベルギーは5月18日に開催された「北海サミット」で、ドイツ、デンマーク、オランダとともに、洋上風力とグリーン水素(注)に関する協力協定を締結(2022年5月30日記事参照)するなど、化石燃料の消費削減と再生可能エネルギーの利用促進に積極的に取り組んでいる。同協定の下でベルギーは、洋上風力と周辺国との送電網の相互接続を組み合わせた、世界初となるエネルギーアイランドを設立し(2021年11月5日記事参照)、洋上風力の発電容量を2030年までに約6ギガワット(GW)、2040年までに8GWとすることを目指す。ベルギーは過去10年間で、国民1人当たりの洋上風力発電容量がデンマークに次いで世界第2位となった。同計画のとおり発電容量が現在の約3倍の6GWに達すれば、北海洋上の風力発電施設から、国内の全世帯に電力を供給することができる見込み。

(注)再生可能エネルギー由来の電力を利用して、水を電気分解して生成される水素。製造過程で二酸化炭素を排出しない。

(大中登紀子)

(ベルギー)

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