ルールに基づく多角的貿易体制を引き続き強く支持

(マレーシア、世界)

クアラルンプール発

2022年06月20日

マレーシアのアズミン・アリ国際貿易産業相は6月16日、多角的貿易体制への強い支持を再確認する声明を発表した(同相ツイッター)。1995年の設立以来の重大な課題に直面するWTOだが、組織・協定の基盤である透明性と無差別原則を尊重し、ルールに基づく多角的貿易体制を、マレーシアとして継続的に支持する意向を示した。第12回WTO閣僚会議は、当初予定していた会期を延長し2022年6月17日に閉幕、約6年半ぶりとなる閣僚宣言を全会一致で採択した(2022年6月20日記事参照)。

同相は、ジュネーブで行われていた閣僚会議にマレーシアを代表して出席。現在世界が抱える諸問題や保護主義の台頭に対処し、WTOシステムの変わらぬ意義を確保するためにも、加盟国間の緊密な協力が欠かせない、と強調した。このほかにも声明では、保護主義への強い対抗姿勢がうかがえる。

例えば、依然として新型コロナウイルス感染症の脅威が残る中、保護主義の流れは世界経済、特に途上国経済の繁栄への障壁となるとの見解を示した。この観点からマレーシアは、ワクチンや治療薬の公平かつ迅速な流通を確保すべく、新型コロナウイルスへの対応と将来のパンデミックへの準備に関する閣僚宣言を支持するとした。さらに食料危機に関しては、食料安全保障上の懸念に対応するためのいかなる緊急措置も、一時的かつ対象を限定したものであるべきで、貿易を歪曲(わいきょく)する効果を持ってはならないと強調。食料不安への緊急対応に関する閣僚宣言、および国連世界食糧計画(WFP)の食料購入に関する閣僚決定(人道目的で購入した食料は、輸出禁止または輸出制限の対象から除外)への賛同を表した。

このほか声明では、いわゆる非伝統的分野とされる労働や環境に関する諸問題に対しても、WTOが焦点を当てる必要性に言及した。特に労働に関しては、原則としてILOの管轄であることは認識しつつ、今般貿易政策が労働基準の順守にも影響を与えうることに鑑みれば、WTOの果たす役割は重要とした。この点に関連して、マレーシアがILO1930年強制労働条約(第29号)の2014年議定書を批准したこと(2022年3月25日記事参照)や、改正雇用法に国際基準を反映させた(2022年6月8日記事参照)ことは、労働者の福祉改善に努めようとするマレーシアの決意を表すものだと付言した。

声明の末文では、マレーシアが多角的貿易体制において引き続き積極的な役割を果たし、WTOに貢献していく姿勢をあらためて堅持した。

(吾郷伊都子)

(マレーシア、世界)

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