イスラエルSNCがモロッコでハイテクカンファレンスを開催

(イスラエル、モロッコ)

テルアビブ発

2022年05月31日

「タイムズ・オブ・イスラエル」紙(5月24日)は、イスラエルのハイテクエコシステムを主導する非営利組織のスタートアップ・ネイション・セントラル(Start-Up Nation Central:SNC)が、モロッコ・カサブランカでハイテク分野の交流を促進するカンファレンスを開催し、イスラエルとモロッコの関連団体が13件の基本合意書(MOU)に署名したと報じた。

今回のカンファレンスには、イスラエルから25社のハイテク企業が参加した。水分野では、精密灌漑技術を開発するエヌ・ドリップ(N-Drip)や、大気から水をつくる技術を開発するウォータージェン(Watergen)(2022年5月17日記事参照)が参加した。農業分野では、センサー・人工知能(AI)と蓄積された農業関連データの活用を、農学専門家の知見が支えることによって、気候変動の影響に適応した農作業の実施を支援するサプラント(SupPlant)や、果実の正確な収穫予想ソリューションを提供するフルートスペック(FruitSpec)、塩分濃度が高い土壌においても、高い生産性を実現する種子を開発するサリクロップ(Salicrop)、先進的な気象予測とリスクマネジメント機能を提供するトゥモローアイオー(Tomorrow.io)などが参加企業に含まれている。

SNCのアビ・ハッソンCEO(最高経営責任者)は「イスラエルは、同国の知見を活用して共通の課題解決を目指す『イノベーション外交』を進めてきた。今回参加した25社は、いずれも水資源の確保や持続可能性、先進的な農業技術を生かした食糧安全保障など、重要な分野に取り組んでいる」と述べ、今回のカンファレンスの意義を強調した。

モロッコ側からは、モロッコのユダヤ人コミュニティの中心人物で、カサブランカの科学工学イノベーション研究開発財団(FRDISI)の代表を務め、モハメッド6世国王のアドバイザーでもあるアンドレ・アズレ氏が開会式典に登壇した。

同記事によると、農業や水、物流などの分野での協力に加えて、人材交流についてもMOUが交換された。モロッコ人エンジニアや開発者を活用することにより、イスラエルにおけるハイテク分野の人材不足を解消することが狙いの1つとみられる(注)。

イスラエルとモロッコは2020年12月に国交を正常化しており(2020年12月15日記事参照)、今回の動きはその後の具体的な流れの1つとみられる。

(注)イスラエルのハイテク分野における人材不足については、以下のビジネス短信を参照。「ハイテク産業の人材供給が逼迫、ウクライナ情勢も影響(2022年3月28日記事参照)」「ハイテク部門の輸出額が全体の5割を超過、雇用や研究開発投資には課題も(2022年5月20日記事参照)」。

(吉田暢)

(イスラエル、モロッコ)

ビジネス短信 db29cb64471343ac