バイデン米政権、同一賃金促進する一連の措置発表、男女間の格差是正へ

(米国)

ニューヨーク発

2022年03月16日

米国のバイデン政権は3月15日、同一労働同一賃金を促進するための一連の措置外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。人種間はもちろん、男女間の賃金格差の是正にも重点を置く。同日は米国で同一賃金を促進する日に指定されており、それに合わせての発表となった。

発表によると、ジョー・バイデン大統領は、連邦政府が実施する事業で請負業者が過去の報酬情報に基づいて従業員の報酬を検討することを制限または禁止するなど、同一労働同一賃金および賃金格差の透明性を強化する大統領令に署名外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしたほか、性別や人種、民族に基づく賃金格差の設定に関して労働省の監視を強化する。また、バイデン大統領は2021年6月に連邦政府における雇用時の多様性や公平性を促進するための大統領令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに署名しているが、今回の発表を通じて、同大統領令には性別や人種による賃金格差の是正、職場の安全、ハラスメントへの対処も含まれることを明確にしている。

同日には、同一賃金の日を祝うサミットが開催され、カマラ・ハリス副大統領のほか、男女間賃金格差不当の訴訟で協会側と2,300万ドルの支払いで和解した米国女子代表サッカーチームの一部選手などが参加した。演説したハリス副大統領は、サッカーを続けながら訴訟に対応してきた女子サッカーチームについて「(彼女たちの努力は)同一労働同一賃金を得たいという理由によるものだ」と述べて、その努力をたたえるとともに、男女間の賃金格差是正の重要性を訴えた(政治専門誌「ザ・ヒル」3月15日)。また、バイデン大統領は声明で「同一賃金の日が必要なくなるまで満足することはない」として、引き続き同一賃金に取り組んでいく姿勢を示した。

労働省によると、同一労働の条件の下フルタイムで働く米国人女性が受け取る賃金は、男性に比べて83.1%(2021年)となっており、2000年の76.9%から賃金格差は縮小しているものの(添付資料図参照)、OECD加盟国の中では下位から5番目で是正が遅れている(日本は下位から3番目)。また同省は、こうした賃金格差による2019年の逸失利益は、白人男性と比べ、黒人女性で393億ドル、ヒスパニック系女性で467億ドルに上ると指摘している。今回の発表は連邦政府が実施する事業に限定されるが、ニューヨーク市は5月15日以降、求人リストに給与の上限額と下限額の記載を義務付ける予定だ(ブルームバーグ2月3日)。今後こうした動きが他地域にも広がり、賃金格差の透明性向上、ひいては不当な賃金格差の是正につながるかどうかが注目される。

(宮野慶太)

(米国)

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