バイデン米大統領のアジア歴訪は「安保に加え経済重視」、米シンクタンク識者解説

(米国、日本、韓国、ASEAN、インド、オーストラリア)

ニューヨーク発

2022年05月20日

米国のシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)は5月17~18日、ジョー・バイデン米大統領が予定する日韓訪問に関し、記者向けの説明会を実施した。17日の説明会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでバイデン大統領の訪日に合わせて発足する予定の「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」(2022年5月18日記事参照)について、18日の説明会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは24日に開催される日本と米国、オーストラリア、インド(クアッド:QUAD)首脳会合について、CSISの識者が展望を語った。

バイデン大統領は5月20~24日に韓国と日本を訪問する予定だ(2022年4月28日記事参照)。マイケル・グリーンCSIS上級副所長は、バイデン氏にとって大統領就任後初めてのアジア歴訪になると指摘した上で、今回の訪問により、ウクライナ情勢に対応する中でも、インド太平洋地域に注力できる政権であることを示せると述べた。マシュー・グッドマン上級副所長は、日韓との協議では従来の安全保障の分野に加えて、経済分野の比重が増すだろうと指摘し、その理由の1つにIPEFの立ち上げを挙げた。IPEFについては、ジーナ・レモンド米商務長官がバイデン大統領の訪日時に正式に発足させると明らかにし、ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)が5月18日の記者会見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、IPEF参加国によるオンライン首脳会合も併せて開催すると説明した。

グッドマン氏は、IPEFの柱となるサプライチェーンやクリーンエネルギーはともに米国の国益にとって重要な課題とする一方、バイデン政権がIPEFでは関税削減などの市場アクセスは扱わないとしており、その中で他国の関与をどれだけ引き出せるかは未知数とした。スコット・ケネディ上級アドバイザーは、ASEAN諸国はIPEFに参加する利点として、インフラ構築支援などを念頭に置いているとし、IPEFの交渉で大きな論点になるとの見方を示した。また、サプライチェーンの強靭(きょうじん)化に関し、特に半導体分野での台湾の重要性を踏まえれば、IPEFやクアッドを通じた台湾との協調が必要になると主張した。なお、米議会からはIPEFに台湾を含めるべきとの声が出ている(2022年5月19日記事参照)。

クアッド首脳会合をめぐっては、日豪印各国の外交姿勢が論点となった。チャールズ・エデル・オーストラリア部長は、オーストラリアで5月21日に連邦議会総選挙(2022年4月12日記事参照)が実施されるという政治環境でも、与野党ともクアッドを支持している点を指摘。クアッドへの関与は、同国が少数国の枠組み(ミニラテラリズム)を重視し、インド太平洋地域諸国とのつながりを強化する取り組みの一環だと分析した。

(甲斐野裕之)

(米国、日本、韓国、ASEAN、インド、オーストラリア)

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