米インド太平洋調整官、米欧とインド太平洋の結び付き強化を訴え

(米国、日本、韓国、ASEAN、EU、ロシア、ウクライナ)

ニューヨーク発

2022年05月11日

米国国家安全保障会議(NSC)のカート・キャンベル・インド太平洋調整官は5月9日、米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)で、インド太平洋地域をめぐる米欧関係について講演外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

キャンベル調整官は、インド太平洋に関する米国と欧州の対話の現状について「かつてない水準にある」と指摘した。過去10年で米欧の対話は大きく変質し、特にバイデン政権発足後は米EU貿易技術評議会(TTC、2021年9月30日記事参照)などを通じて、サプライチェーンなどの個別課題だけでなく、より広い共通の戦略的観点でも進展したと振り返った。

他方、ロシアのウクライナ侵攻をめぐっては、インド太平洋諸国側から欧州への自発的な関与が増大した点を強調した。対ロ制裁措置への支持や欧州へのエネルギー供給などを例に挙げ、インド太平洋諸国のこうした幅広い行動は過去に見られなかったと述べた。キャンベル調整官はこの背景に、ウクライナ政府による各国への働き掛けや、これまでのインド太平洋地域と欧州の関係構築の努力が実を結んだこと、ウクライナで起きたような軍事行動がインド太平洋地域で起き得ることへの戦略的な危機感があると分析した。

また、キャンベル調整官は、5月に活発化するバイデン政権のインド太平洋地域との外交にも言及した。5月12~13日に行われるASEANとの特別サミット(2022年4月19日記事参照)については、技術や教育、インフラなどが議題になるとの見通しを示し、欧州もASEANと同様の対話を望んでいるとした。ジョー・バイデン大統領が予定している日韓訪問(2022年4月28日記事参照)では、足元の喫緊の課題としてウクライナ情勢がある一方、「21世紀のより大きな根本的な課題はインド太平洋地域にある」というメッセージを送りたいと語った。ただ、これは米国が欧州から離れることを意味するのではなく、米国と欧州、インド太平洋を結び付ける戦略的枠組みをつくることが自身の最優先課題になると主張した。

(甲斐野裕之)

(米国、日本、韓国、ASEAN、EU、ロシア、ウクライナ)

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