英政府、EUからの輸入手続き追加導入を停止、税関手続きの新たな枠組み構築目指す
(英国、EU)
ロンドン発
2022年05月02日
英国のジェイコブ・リース・モグ内閣府国務相は4月28日、グレートブリテン島における輸入品の国境管理に関する声明を発表。EUからの離脱(ブレグジット)に伴う移行期間終了後、段階的に導入を予定していた農産食品を中心とするEUからの輸入にかかる新たな税関手続きについて、2022年中の導入を中止することや、グレートブリテン島の国境手続きを電子化する計画があることなどを発表した。
声明では、昨今の物価上昇やエネルギー価格上昇により、事業者や消費者が日々の生活に影響を受けており、現時点で新たな手続き上の負担を増やし、港湾やサプライチェーンでの混乱を招くことは適切ではないとして、2022年中のEUからグレートブリテン島への新たな輸入手続きの導入を取りやめるとしている。導入取りやめとなった今回の措置は以下のとおり(注)。なお、既でに導入されている輸入手続きは継続される。
- 現在、仕向け地で実施されている、EUからの輸入品に対する衛生植物検疫(SPS)検査の国境検査所(BCP)への移管
- EUからの輸入品に対する安全セキュリティー宣言(Safety and Security declarations)の要件
- EUからの輸入品に対するさらなる衛生証明書とSPS検査の要件
- EUからの冷蔵肉製品の輸入の禁止と制限
その一方で、事業者や消費者の不調和とコスト軽減のため、新技術とデータの活用により、グレートブリテン島の国境手続きをデジタル化する変革プログラムを加速化させるとしている。また、英国政府は、輸入時の国境検査の新たな枠組みを定める「目標運用モデル(Target Operating Model)」を2022年秋に公表し、2023年末に新たな枠組みの導入を目指すとしている。この新たな枠組みは、EU以外の国々からの物品に対しても等しく適用するとしており、日本からグレートブリテン島への輸入に際してもEUと同様のルールが適用されることとなる。
英国政府は2021年前半を移行期間終了後の猶予期間として、EUからの輸入手続きを段階的に導入するとしていた(2020年6月16日記事、2020年10月15日記事参照)が、その後数回にわたり段階的導入の延長を発表し、2021年11月18日に改定された「国境運用モデル」では、最長2022年10月末まで延長することとしていた(2021年11月26日記事参照)。
(注)全て2022年7月1日から導入予定だったもの。ブレグジットに伴う移行期間終了後の税関手続きについては、ジェトロ調査レポート「EU英国通商・協力協定を踏まえた日本企業のビジネス上の留意点(1.3MB)」(2022年3月)も参照。
(飯田俊平)
(英国、EU)
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