イエレン米財務長官、対中追加関税見直しの可能性に言及

(米国、中国)

ニューヨーク発

2022年04月26日

米国のジャネット・イエレン財務長官は4月22日、トランプ前政権以降、1974年通商法301条に基づいて中国原産の輸入品に課している追加関税(301条関税)について、見直しの可能性を示唆する発言を行った。

イエレン長官は米ブルームバーグTVの取材に応じ、バイデン政権は現在、対中通商戦略を慎重に再検証していると述べた上で、高進しているインフレ対策として301条関税見直しは「検討に値する」とし、できることは全て行いたいと発言した。さらに前日には、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)のダリープ・シン大統領安全保障副補佐官(国際経済)が外部のイベントで、インフレが高進する中では戦略的に重要でない消費財分野などに対する301条関税は撤廃・軽減を検討し得るとの発言をしている(ロイター4月21日)。

301条関税については、米産業界から撤廃に向けた働きかけが続いており、それを受けた連邦議員も超党派で、政権に対して適用除外措置の拡大を要請している。こうした動きを受けて、バイデン政権では2021年来、NSCを中心に301条関税を見直す可能性を議論しているとされる。通商分野に詳しい米法律事務所は、NSCは中国の産業補助金を狙いとした新たな301条調査を開始し、追加関税の対象を中国政府が戦略的に重視する分野に絞る一方、インフレに影響ある消費財などの分野では撤廃・軽減したいのではないかとみている。他方で、301条を所管する通商代表部(USTR)は、2021年10月から開始している中国との通商対話への影響を懸念して、新たな動きに反対しているもようだ。USTRが3月に発表した2022年の通商政策課題でも「拙速な対中措置は米国自身の脆弱(ぜいじゃく)性」を生むと指摘している(2022年3月2日記事参照)。USTRは3月に、一部の品目に301条関税の適用除外措置の復活を認めたが、これも限られた内容になっている(2022年3月24日記事参照)。

しかし、USTRは301条に基づいて、7月までに見直しに向けた何らかの行動を取る可能性がある。トランプ前政権は4回に分けて301条関税を発動しているが、第1弾となる品目群(いわゆるリスト1)への発動は2018年7月6日だった。301条によると、追加関税発動から4年間が満了する最後の60日間において、恩恵を受ける国内産業界から継続要望がなければ、追加関税は終了することになっている。よって、USTRは7月6日までの60日間において、国内産業界に対して、まず301条関税継続の是非などに関するパブリックコメントを募集する可能性がある。

(磯部真一)

(米国、中国)

ビジネス短信 a992642a04707fe6