新型コロナ禍で急成長するスタートアップ市場、日本企業の進出をブラジル政府が支援

(ブラジル、日本)

米州課

2022年05月25日

在日ブラジル大使館は5月13日、「Invest in Brazil Opportunities in the Innovation Sector」と題するセミナーを開催した。同セミナーでは、ジェトロ、ブラジル輸出投資振興局(Apex-Brasil)、ブラジル・プライベートエクィテイ・ベンチャー・キャピタル協会(ABVCAP)などが講演した。

Apex-BrasilとABVCAPは、海外スタートアップ企業がブラジルでビジネス展開するに当たっての支援プログラム「Scale Up in Brazil外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」の2022年の対象国の一つに日本を選定している。Apex-BrasilとABVCAPはセミナーを通じ、ブラジルのスタートアップ市場動向や同プログラムについて紹介すると共に、プログラムへの参加者を募った(注1)。

セミナーではまず、エドゥアルド・サボイア駐日ブラジル大使が開催あいさつを行った。サボイア大使は、「新型コロナ禍」にもかかわらず、ブラジルにおけるスタートアップ企業への2021年の投資額は約100億ドルを記録するなど、同市場が急成長していることを強調した上で、「日本とブラジルが築き上げてきた協力関係を、イノベーションを通じてより一層強くしていきたい」と述べた。

写真 急成長するブラジルのスタートアップ市場について紹介するサボイア大使(在日ブラジル大使館提供)

急成長するブラジルのスタートアップ市場について紹介するサボイア大使(在日ブラジル大使館提供)

続いて、ジェトロ・サンパウロ事務所の松平史寿子次長は「2021年度 海外進出日系企業実態調査(中南米編)PDFファイル(2.5MB)」の調査結果をもとに、ブラジルのビジネス環境を紹介。松平氏は、「税制・税務手続きの煩雑さ」など多くの社会課題があるが「これら社会課題を解決するスタートアップ企業も台頭している」「ブラジルでは『新型コロナ禍』も相まってデジタル化が進んでいる」、と強調した(注2)。

Apex-Brasilのエレーナ・ブランドン氏は、2021年のブラジルスタートアップ市場について解説した。同氏によると、現時点で、中南米発のユニコーン企業49社のうち27社がブラジルの企業。ブラジルは「2021年に最もユニコーン企業が誕生した国」のトップ10入りも果たすなど、ブラジル発のスタートアップ企業が世界で存在感を高めていると説明した(注3)。

ABVCAPのクリスティアーネ・ナシメント氏は、「Scale UP in Brazil」の支援内容やこれまでの支援実績を紹介した。同氏によると、プログラムでは専門家からコンサルティングなどを受け、ブラジルの起業家や企業と交流しながら、ブラジル国内での事業展開を目指す。2019年に、本プログラムが立ち上がって以降、ABVCAPはこれまでに計15社をアクセラレートしてきた。

同プログラムのエントリー期限は2022年6月12日(日曜、ブラジル時間)。応募フォームはこちら外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから。

(注1)「ScaleUp in Brazil 2022」はブラジルの政府機関がイスラエル貿易投資庁、シンガポール企業庁(Enterprise Singapore)及びジェトロと共催で実施するプログラム。プログラムに関心のある企業はジェトロ・サンパウロ事務所外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにて相談を受け付けている。Scale Up in Brazilの詳細は、日本語ガイドライン2021年12月22日記事参照。

(注2)「2021年度 海外進出日系企業実態調査(中南米編)PDFファイル(2.5MB)」によれば、「ブラジルにおける投資環境面のリスク」として、最も回答割合が多いのが「不安定な政治・社会情勢(80.4%)」、次いで「税制・税務手続きの煩雑さ(74.1%)」「不安定な為替(67.9%)」「行政手続きの煩雑さ(許認可など)(50.9%)」と続く。また、「デジタル関連技術の活用・課題:各国の活用状況」について聞いたところ、調査対象国6カ国(メキシコ、コロンビア、ペルー、チリ、ブラジル、アルゼンチン)の中で、デジタル技術を「すでに活用している」と回答した割合は、ブラジルが最も高く、48.2%だった。

(注3)同氏によれば、セクター別にみると、新型コロナ感染拡大の影響で、エドテック分野やヘルステック・ライフサイエンス分野が成長した。

(小西健友)

(ブラジル、日本)

ビジネス短信 b40c2c8dcd33bb12