米サブスク市場は成長鈍化、民間調査

(米国)

ニューヨーク発

2022年05月30日

米国では、新型コロナウイルス感染拡大を契機に、消費者のニーズはデジタルへと移行し、食品や日用品、セルフケアやエンターテインメントなどさまざまな分野で、サブスクリプションサービス(定期購入型サービス)への需要が拡大した。しかし、社会経済活動の正常化が進むにつれて、同市場の成長は徐々に鈍化する可能性が指摘されている。

米調査会社イーマーケターは5月23日、米国でのサブスクリプション型電子商取引(EC)の売上高は、2022年に前年比15.0%増の334億8,000万ドルに達するとの調査結果を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。2024年まで売り上げは堅実に伸びるとされるものの、EC売り上げ全体に占める割合は2022年と同じわずか3.2%にとどまるとした。また、サブスクリプション購入者の増加率は、2020年の12.8%から2022年は3.3%に鈍化し、2024年までは3%前後で推移する見込みとなっており、消費者のサブスクリプションへの支出はいずれ頭打ちになり、企業による長期的な売り上げ拡大は厳しくなると想定される。

市場調査会社ヌメレーターによると、米国では6割強の世帯が小売り関連の有料会員制プログラムに加入しているが(2022年5月26日記事参照)、物価高騰が続く中、消費者は固定的な支出を見直さざるを得なくなっている。決済サービスの動向を追う米ペイメンツが実施した調査(注)では、サブスクリプションサービスを解約する傾向もみられており、その理由として最も多かったのは「経費削減」(65%)が挙げられた。そのほか、「商品が不要になった」「商品代金が高くなった」などの回答が全体のそれぞれ3割となった。

直近では、映像配信サービスの成長見通しの不透明感が指摘されており、米動画配信大手ネットフリックスが発表した2022年第1四半期(1~3月)の決算では、同四半期の既存加入者数が20万人減少し、新規加入者を含めた全有料会員数が約10年ぶりに減少したと報告した。今後も減少が続くと予想されており、全世界における第2四半期(4~6月)の有料会員数は200万人減少すると見込んでいる。ロシア・ウクライナ情勢の影響で、同社がロシアでのサービスを停止したことに加えて、複数人でのアカウント共有制限のためにパスワード共有の規制を行う可能性を示したことや、映像配信サービスの競争激化などが会員数減少の原因だとしている。そのほか、米放送局CNNは会員向け動画配信サービスの「CNNプラス」を2022年3月から開始したが、開始からわずか1カ月足らずで停止することとなった。サービス開始当初から視聴者誘致に苦戦し、1日当たりの利用者数は1万人未満にとどまった。

パーソナルファイナンスサービスを提供する米スタートアップ、トゥルービルのヤヤ・モクターザダ氏は「人々は財布のひもを固くし、支出先を絞り込む姿勢を強めている。サブスクリプション(市場)のピークはもう過ぎたかもしれない」と指摘した。新型コロナの感染拡大当初は、ロックダウン期間中に巣ごもり消費の需要は急速に拡大したものの、経済活動が本格的に再開する中で物価高が続き、サブスクリプション市場の将来性に懸念が高まる。

(注)米国の消費者1,919人を対象としたアンケート調査。

(樫葉さくら)

(米国)

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