第1四半期のGDP成長率は前期比0.8%、3月単月ではマイナスに

(英国)

ロンドン発

2022年05月13日

英国国家統計局(ONS)の5月12日付発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、英国の2022年第1四半期(1~3月)の実質GDP成長率(第1次速報値)は4期連続プラスの前期比0.8%となった(添付資料図、表参照)。新型コロナウイルス感染拡大前の2019年第4四半期(以下、新型コロナ前)との比較では0.7%となった。

2022年第1四半期のGDP成長率を需要項目別にみると、内需を牽引する個人消費(家計最終消費支出)は、レストランやホテル、衣料などに対する支出が増加し、前期比0.6%となった一方(添付資料表参照)、新型コロナ前との比較ではマイナス0.5%にとどまった。政府最終消費支出は、新型コロナ共生計画の導入(2022年2月22日記事参照)に伴い関連支出が削減され、前期比マイナス1.7%となった。総固定資本形成は、公共投資が拡大し前期比5.4%、新型コロナ前との比較では3.4%となった。

産業別にみると、サービス業は、情報通信業、宿泊・飲食業、運輸・倉庫業が好調だったため、前期比0.4%、新型コロナ前比では1.4%となった。これは、特に旅行業界に対する新型コロナ規制緩和の効果がでたとみられる。一方、卸売・小売・自動車修理サービス業は前期比マイナス2.3%。ONSの調査(3月7日~4月3日実施)によれば、同産業の約4割がサプライチェーンの混乱を経験したと回答、その影響も受けたとみられる。

ONSのダレン・モーガン氏は、今回の発表に関し、第1四半期の成長率は1年ぶりの低水準となったものの、サービス業、運輸業、人材派遣業、旅行業などの成長により、英国経済は4四半期連続で成長し、新型コロナ前の水準を上回った、と述べた(「ガーディアン」紙5月12日)。

一方で、2022年第1四半期のGDP成長率を単月でみると1月は前月比0.7%、2月は0%、3月はマイナス0.1%に落ち込んだことから、産業界は懸念を示しており、特に経済的に脆弱(ぜいじゃく)な家庭やエネルギー集約型産業に対する政府の対応を求める声も聞かれる。英国産業連盟(CBI)のチーフエコノミスト、レイン・ニュートン=スミス氏は、燃料費の高騰などのコスト圧力と物価上昇が企業と家計に厳しい影響を与えており、それが低調な経済見通しにつながっているとした。英国商業会議所(BCC)も、成長の減速は第1四半期に英国経済が勢いを失ってしまったことを示しているとし、政府に対し、企業が生産力を回復し経済を強化するための緊急予算の必要性を呼び掛けた。

(島村英莉)

(英国)

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