米NASAネルソン長官、日米の宇宙探査協力を歓迎
(米国、日本)
米州課
2022年05月25日
米航空宇宙局(NASA)は5月24日、岸田文雄首相とジョー・バイデン米大統領の日米首脳による共同声明(2022年5月24日記事参照)において、宇宙探査の分野での協力が盛り込まれたことを受けて、ビル・ネルソン長官のコメントを発表した。
声明では、日米両国が日本人宇宙飛行士を月周回有人拠点「ゲートウェイ」に搭乗させることについて2022年内に実施協定の調印を目指すとしたほか、将来的には有人月着陸プロジェクト「アルテミス計画」(注1)において、日本人宇宙飛行士の月面着陸を目指すという目標を含め、有人およびロボットによる宇宙探査で協力することが明記された。
ネルソン長官は「日本と米国の宇宙飛行士が共に月面を歩くという両国共通の願いは、地球上の人類の利益のために責任を持って透明性ある宇宙開発を行うという、両国共通の価値観を反映したもの」と述べた上で、「この歴史的な発表は、バイデン大統領が米国単独ではなく、志を同じくするパートナーとともに歩んでいくということを再び世界の国々に示すものだ。われわれはアルテミス計画の下で、科学や経済的機会など共通の価値観を有する国々とともに、宇宙への投資と探査を行っていく」と述べた。
また、NASAは、これまでの日米協力の事例として、(1)気候変動に関する予測能力を向上させるための地球観測データの利用、(2)日本が小惑星探査機「はやぶさ2」が採取した小惑星サンプルを2021年11月に米国に提供し、米国は小惑星「ベンヌ」のサンプルを2023年に日本に提供する予定であるなどの相互共有、(3)国際宇宙ステーション(ISS)やアルテミス計画において、宇宙航空研究開発機構(JAXA)がNASAの重要なパートナーであり、特にゲートウェイの国際居住モジュール(I-HAB)において環境制御・生命維持システム、電池、熱制御、画像処理装置などを通じた基幹システムの技術協力、などを挙げた。
なお、岸田首相とバイデン大統領は2022年5月23日に、JAXAの山川宏理事長、油井亀美也宇宙飛行士および大西卓哉宇宙飛行士の案内を受け、「はやぶさ2」が小惑星リュウグウから地球に持ち帰ったサンプルの実物や、「はやぶさ2」、「全球降水観測計画・二周波降水レーダ」および「有人与圧ローバー」(注2)の模型を視察している。
(注1)米国が提案している国際宇宙探査計画で、2024年有人月面着陸、2030年代の有人火星着陸を目指すと発表。また月周回有人拠点「ゲートウェイ」を構築する計画を発表し、日本政府も参画を表明している。
(注2)アルテミス計画における月面探査で活用が期待される、宇宙飛行士が専用宇宙服なしで滞在可能な与圧空間を有した月面探査車。
(葛西泰介)
(米国、日本)
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