中国のデジタル法規制はグローバルサプライチェーンに悪影響、米中ビジネス協議会報告書

(米国、中国)

米州課

2022年05月06日

米中ビジネス協議会(USCBC)は4月22日、中国のデジタル法規制への米国企業の対応方法に関する報告書を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

同報告書は、中国で活動する米国企業にとって中国で重要となる課題として、データローカライゼーション措置、サイバーセキュリティー規則、越境データの流通に対する制限を挙げ、中国はデータとサイバーセキュリティーの統治で最も制限の厳しい国の1つと指摘した。また、重要な用語の定義や管轄機関が不明瞭なほか、規則の順守が義務なのか任意なのかが曖昧で、法執行にも一貫性がない点を問題視している。

同報告書は、中国に進出している米国企業30社を対象に実施した聞き取り調査に基づいて作成されている。それによると、聞き取りに応じた企業はいずれも、中国のデータ管理体制が定まらない中、自社のデータの流れを把握し、事業構造を評価し、必要な調整を行っているようだ。今後、厳格な運用が求められる場合、進出企業が技術や人材、事業プロセスを中国向けに整備し、中国を除いたグローバルな運用と切り離して対応しなければならない状況も起こり得ると述べている。他方、そのような状況下では、進出企業は商品の開発や販売についても同様に、中国を切り離す必要があるため、中国のビジネス環境が競争力を失い、同国の消費者や企業、世界経済における影響力にも支障を来すとしている。

中国のデジタル規制を念頭に置いた米国の動きに、バイデン政権が構想を練るインド太平洋経済枠組み(IPEF)がある。米国通商代表部(USTR)は3月11日に公示したIPEFに関するパブリックコメントを募集する官報の中で、枠組みを構成する4つの柱のうちの1つ「公平で強靭(きょうじん)性のある貿易」に関連し、デジタル経済に関するコメントも求めていると記した(2022年3月10日記事参照)。米国としては、IPEF内にデジタル分野での基準を設けてパートナー国などを巻き込むことにより、ジョー・バイデン大統領自身が「最も深刻な競争相手」と明言する中国に対する戦略を進めたい考えだ。

(片岡一生)

(米国、中国)

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