4月のインフレ率は前月比1.06%、押し上げ主因は飲食料品と交通・運輸

(ブラジル)

サンパウロ発

2022年05月20日

ブラジル地理統計院(IBGE)は5月11日、代表的な物価指数である拡大消費者物価指数(IPCA)の4月の上昇率を前月比1.06%と発表した(添付資料表参照)(注1)。4月単月の上昇率としては、1996年4月に1.26%を記録して以来の高さとなった。

前月比の上昇率を費目別にみると、住居関連(1.14%減)以外の全ての項目で上昇した。最も上昇率が高かったのは飲食料品(2.06%)だった。寄与度でも0.43ポイントと最も高かった。次いで上昇率が高かったのは、交通・運輸(1.91%)、保健・個人衛生品(1.77%)だった。交通・運輸は、寄与度でも0.42ポイントと2番目に高かった。

5月11日付IBGEプレスリリースによれば、飲食料品の上昇は、ジャガイモ(18.28%)、ロングライフ牛乳(10.31%)(注2)、トマト(10.18%)、大豆油(8.24%)、フランスパン(4.52%)、肉(1.02%)の価格が上昇したことが主因。5月11日付現地紙「エスタード」によれば、IBGEのアンドレ・アルメイダ物価指数アナリストは同紙のインタビューで、「食料品の価格上昇は世界的なコモデティ価格の上昇と、気候が(国内で野菜や穀物などの)栽培に適さない期間があったことによる。ウクライナでの戦争も、大豆や小麦などの穀物価格を上昇させた。大豆油、フランスパン、さらには飼料価格の上昇から動物由来の製品価格も上昇した。結果的にブラジル国民の家計を圧迫することにつながっている」と説明した。

交通・運輸の上昇要因は、燃料価格(3.2%)、特にガソリン価格が3月(6.95%)に引き続き4月にも2.48%上昇したことによる。エタノール(8.44%)やディーゼル油(4.74%)の価格も上昇し、自動車やトラック用燃料の価格が上昇している。燃料価格の上昇は輸送コストを押し上げ、飲食料品のインフレ上昇にも影響を与える。また、公共交通機関では、タクシー(9.16%)も上昇した。サンパウロ市で4月2日から、2015年1月以来となるタクシー料金の値上げが行われたことが影響を与えている。

唯一マイナスとなった住居関連(1.14%減)については、降雨不足から引き起こされた水力発電のダム貯水量減少を考慮して追加徴収してきた電力料金の措置を、4月16日に終了したことを理由に挙げている(5月11日付IBGEプレスリリース)(注3)。

2022年4月を基準にした過去12カ月のインフレ率(累計)は12.13%で、中央銀行が設定する2022年のインフレ目標の中央値(3.5%、許容範囲は上下1.5ポイント)を引き続き上回っている。中銀はこの点も踏まえ、5月3~4日に開催された金融政策委員会(Copom)で、政策金利(Selic)を11.75%から12.75%に引き上げた(注4)。引き上げは10会合連続だった。

写真 「飲食料品」で最もインフレ上昇率が高くなったジャガイモ(ジェトロ撮影)

「飲食料品」で最もインフレ上昇率が高くなったジャガイモ(ジェトロ撮影)

写真 「飲食料品」でインフレ上昇率が2桁の上昇率となったトマト(ジェトロ撮影)

「飲食料品」でインフレ上昇率が2桁の上昇率となったトマト(ジェトロ撮影)

(注1)2022年1月から4月までの累計インフレ率は4.29%。2022年4月を基準にした過去12カ月の累計は12.13%。

(注2)Leite Longa Vidaと呼ばれる、超高温殺菌製法で製造された商品。

(注3)ブラジルでは現在、電気代の追加料金は水力発電所のダム貯水量や火力発電所の稼働率を基に算定されている。追加料金は「緑」「黄色」「赤1」「赤2」の4段階の色で示される。「緑」の場合は追加料金がない。2021年9月以降、既存の4段階を上回る追加料金を課す「渇水」レベルが設定されていたが、2022年4月16日以降は「渇水」から「緑」に変更された。

(注4)5月4日付の金融政策委員会(Copom)第246回公式発表によれば、世界的な新型コロナウイルス感染拡大で引き起こされたインフレ圧力は、中国における新型コロナ感染の再拡大やウクライナ情勢でさらに強まった。また、先進国が政策金利を引き上げたことが新興国の不確実性の高まりやボラティリティの大きさにつながることなどを、政策金利引き上げの決定理由としている。

(古木勇生)

(ブラジル)

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