UAEが9月からビザ制度を改正、アライバルビザで60日滞在可能に

(アラブ首長国連邦)

ドバイ発

2022年05月10日

アラブ首長国連邦(UAE)政府は4月18日付で、外国人の滞在ビザに関する制度を9月から変更すると発表した。今回の変更により、各種ビザの要件が簡素化されるとともに、滞在可能日数が増加するなど、UAE国内での外国人の活動が容易になる見込みだ。

UAEメディア局の発表や地元紙の報道では、主な変更内容として、発給される入国ビザが10種類(注1)に多様化することや、特定の要件を満たした場合には10年間の長期居住ビザが発給されるが、その対象が拡大される点などを挙げている。

中でも注目を集めているのは、短期滞在者に付与される滞在可能日数の増加だ。今までは、外国人に対しては原則30日であった短期滞在ビザ(アライバルビザ)の日数が、多くの場合60日に倍増する(注2)。日本も原則30日であるため、60日に増加する見込みだ。観光やバカンスを目的としてUAEを訪れる海外客は、より長期の滞在が可能となる。また、UAE国内で雇用を求める外国人にとっても、より余裕を持って職探しに専念できるメリットがある。

UAE政府は近年、外国人が訪問・滞在しやすい環境づくりを積極的に進めている。ドバイ首長国では2020年に、職業からリタイア(引退)しても引き続き5年間の居住許可を得られる「リタイア・イン・ドバイ」プログラムや、ドバイに住みながら外国企業での在宅勤務を可能にする「バーチャル・ワーク・プログラム」を開始している(2020年12月16日付地域・分析レポート参照)。2021年にはUAE全体で、「リモートワークビザ」と「マルチ観光ビザ」を導入している(2021年3月31日記事参照)。これらの施策は、UAEに海外客を呼び込み観光産業を活性化させるとともに、外国人にとって魅力的な就労・居住環境であることをアピールし、優秀な高度外国人材を集め、国力の増強を図るという狙いがある。今回の制度変更も、上記の方針をさらに推し進めたものとみられる。

他方、本措置により、居住許可を得ずに国内に一時滞在する外国人の大幅な増加が想定される。当局側には、一時滞在者の活動を適切に管理し、国内の治安を維持することも求められる。現状、現地報道ではその点に触れるものは見当たらないが、世界有数の治安の良さを売りにしているUAEとしては、そうした懸念を払拭(ふっしょく)する努力も必要になるとみられる。

(注1)観光ビザ、親族・友人訪問ビザ、臨時労働ビザ、求職ビザ、商業活動ビザ、治療ビザ、留学・研修ビザ、外交ビザ、緊急用ビザ、GCC居住者用ビザの10種類。

(注2)現時点では、具体的にどのビザについて滞在日数が増加するかは明示されていないが、現在30日の日数が付与されているビザおよび国籍外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに対して適用されるとみられる(日本も原則30日)。シェンゲン協定加盟国の国籍保有者に対しては既に90日が付与されているなどの例外もある。

(山村千晴)

(アラブ首長国連邦)

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