米内務省、連邦公有地での石油・ガス開発リース権販売を中止、メキシコ湾とアラスカ沖合

(米国)

ニューヨーク発

2022年05月18日

米国内務省は5月11日、メキシコ湾およびアラスカ沖合クック湾で進めてきた石油・ガス開発リース権販売を中止することを発表した。内務省の広報官がメディア向けに公表した声明で明らかとなり、ロイターやブルーバーグなど複数メディアが一斉に報じている。

メキシコ湾沖合では2件のリース販売が実行されていたが(2022年4月21日記事参照)、2件とも中止するとしており、その理由として「関連する訴訟によって著しい遅れが生じたこと」を挙げている(米国環境エネルギー政策動向マンスリーレポートVOL.11PDFファイル(0.0B)、P2参照)。また、2021年行われる予定だったアラスカ沖合クック湾でのリース販売も「業界からの関心の低さ」を理由に現在は進められていないとして、同様に中止するとしている。

今回の決定に環境擁護派からは歓迎の声が上がるが、共和党や石油業界からは反発の声が上がっている。アラスカ州選出の共和党リーサ・マーカウスキー上院議員は声明で、「業界の関心の欠如を持ち出すのは政権の幻想だ」「アラスカの関係団体はリース販売に関心を持っていると確信している」と指摘している。与党内からも石炭産業が盛んなウェストバージニア州選出のジョー・マンチン上院議員は今回の決定に際して「本当にひどい決定だ」と批判するなど、13日にガソリン価格が過去最高値をつける中、4月のリース販売再開発表からの急な方針転換に身内からも疑問の声が上がっている。

米エネルギー情報局(EIA)によると、米国の原油生産量は、2021年から日量70万バレル増加し、2022年平均で日量1,190万バレルまで増加する見込みだが、パンデミック前の水準の生産量に戻るのは2023年後半ごろになるとされている。石油会社は脱炭素が進み、長期的には原油価格が低下することを懸念して、新規の開発には二の足を踏んでいるとみられる。G7がロシア産の原油禁輸措置を発表したことやウクライナ情勢の長期化などを背景に再び原油価格が上昇傾向にある中、原油はもちろん天然ガスも含め、バイデン政権が米国でのエネルギー生産を今後さらに増やし、欧州など世界のエネルギー需要を下支えできるかが注目される。

(宮野慶太)

(米国)

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