2021/22年度第3四半期まで輸入額43.8%大幅増、外貨準備高が減少傾向に

(バングラデシュ)

ダッカ発

2022年05月18日

バングラデシュ銀行が発表した輸入統計によると、2021年7月~2022年3月までの輸入額は664億9,870万ドルとなり、前年同期比の462億2,990万ドルから43.8%の大幅増となった(添付資料表参照)。

最も輸入額が多いのは衣料品関係などの中間財で、衣料品関係全体で75.2%増、その他中間財で69.5%増となった。中間財の品目では、糸(161.1%増)、医薬品(303.1%増)、肥料(212.4%増)などが大幅な増加を見せた。また、順調な国内消費を背景とし、消費財(主に食品)の輸入が50.8%増となった。

一方で、輸入増加に伴い課題も表面化している。2021年7月~2022年3月における輸出総額は386億567万ドル(2022年4月8日記事参照)で、貿易赤字は278億9,303万ドルと膨大だ。これを受け、外貨準備高は3月末時点で441億4,680万ドルとなり、前月比で18億100万ドル(3.9%減)減少している。4月末時点では440億8,900万ドルとさらなる減少を見せ、過去最大の外貨準備高を達成した2021年8月(480億6,000万ドル)から39億7,100万ドル減少している(2021年12月24日記事参照)。

輸入超過は対米ドルでタカ安傾向を誘導する。2022年2月頭は1ドル86タカであったが、5月12日時点で86.7タカに切り下がっている。報道によると、市中銀行のドル不足もあり、実勢レートは1ドル90~92タカとのことだ。バングラデシュは食用油や砂糖などの生活必需品を多く輸入しているために、タカ安は国内の物価高に繋がり、市民生活への影響も大きい。例えば、政府が小売価格を統制する大豆油の小売価格は、ロシアによるウクライナ侵攻やインドネシアからのパーム油の輸出禁止も相まって、前例のない価格高騰の状況にある(「デイリースター」紙5月6日)。

現況を改善すべく、政府は外貨準備高の減少を抑止するため対応策を発表した。5月10日、バングラデシュ銀行は、スポーツ用多目的車(SUV)やセダン車など贅沢品の輸入時にかかる信用状(LC)開設時の預託金を25%から75%に引き上げることを発表した(「フィナンシャル・エクスプレス」紙5月11日)。さらに、政府役人による不要不急な外国出張は制限することも発表している。今後、これらの外貨流出抑止措置により、日系企業による輸入に影響が見られないか注視が必要だ。

(安藤裕二)

(バングラデシュ)

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