通貨タカ安傾向が続き、輸入・国民生活に影響も

(バングラデシュ)

ダッカ発

2021年12月24日

バングラデシュで、2021/2022年度(2021年7月~2022年6月)の通貨タカ安傾向が止まらない。2020/2021年度の年度平均1ドル84.81タカ、2020/2021年度末(2021年6月)の84.8タカに対し、8月以降はタカ安傾向が進んで85タカ台、12月には85.8タカとなり、半年で1.17%もタカ安に振れた(添付資料表参照)。過去数年の対ドル為替レートを見ても、タカ安傾向が進んでおり、今後、特に輸入に影響を及ぼす可能性がある。

バングラデシュでは、2021年3月から7月まで、新型コロナウイルス感染拡大対策による長期にわたるロックダウンが継続していた。しかし、輸出志向型の企業については操業を継続し、主要産業の衣料品輸出が好調だったことと、海外労働者による郷里送金の受け入れにより、2021年8月に480億6,000万ドルと過去最高の外貨準備高を記録していた。衣料品輸出にかかる原材料輸入や燃料輸入が増加したことに加え、8月以降はロックダウンが解除され、経済活動が活発化したことにより消費活動が伸び、輸入が増加したことがタカ安傾向に作用したと考えられる。報道では、2021年7~9月の輸入にかかる信用状(LC)開設額は、約199億ドルと前年同期比(133億ドル)で49%増加したとされる。タカ安傾向を調整するため、バングラデシュ政府はタカを買い戻すといった動きも見せているが、タカ安傾向は依然継続している。

このタカ安傾向に対し、日系企業の事業活動にも影響が出ている。現地で液化石油ガス(LPG)を輸入販売するオメラガスワンを運営するサイサン(本社:埼玉県さいたま市)の田中陸郎代表取締役社長は「タカ下落は、当社が取り扱うLPGの販売価格に大きく影響している。また、生活必需品である衣食住に関する製品価格に直接影響を与えるだけでなく、間接的にも原材料高騰により国内製品の価格上昇を招くなど、生活に大きな影響を与えている。当社では、『新型コロナ禍』でのコンテナ不足により海上運賃の高騰、原油高によるLPGの価格高騰に加え、タカ建てに価格転換した際、販売価格がさらに高騰している状況。今も続く『新型コロナ禍』において、タカ安をコントロールし、インフレ抑制による国民の生活をどう守るのか、政府への期待は大きい」と話す。

近年、旺盛な内需を背景にバングラデシュへの輸入ビジネスの事業拡大を行う企業も増えており、タカの為替動向には引き続き注意が必要だ。

(安藤裕二)

(バングラデシュ)

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