駆け込み需要後の3月下旬以降は消費者の購買力が減退

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2022年05月13日

制裁の影響を受けるロシアで個人と企業の購買力低下が顕著となっている。ロシア中央銀行の「地域経済報告」(4月20日)によれば、欧米の制裁によりルーブルが急落したため3月上旬に駆け込み需要(2022年4月14日記事参照)が発生したが、3月下旬以降は消費者の活動が停滞している。

制裁による原材料や部品価格の高騰が商品価格を上昇させたこと、および金融の引き締め政策により家計が預金を積み増したことが消費を減退させた。消費者は借り入れに依存する傾向にあるが(2022年1月4日記事参照)、3月の個人向け貸出総額は前月比150億ルーブル増(前年同月比436億ルーブル減)にとどまり、1月の前月比2,410億ルーブル増、2月の4,320億ルーブル増と比較し貸出額が落ち込んだ(中銀「ロシア連邦の銀行セクターの発展について」4月20日)。調査会社ロミルが5月4日に発表したロシア人の個人消費支出統計をみても、一世帯当たりの週ごとの平均支出は駆け込み需要が発生した2月28日~3月6日は6,978ルーブル(約1万3,956円、1ルーブル=約2円)だったが、4月25日~5月1日には5,143ルーブルにまで低下した。

企業の購買活動も制裁の影響を受けて停滞している。S&Pグローバルが5月4日に発表した4月のロシア製造業購買担当者景気指数(PMI)は48.2(前月比4.1ポイント増)と、景気後退とされる基準の50を3カ月連続で下回った。中銀が発表した企業向け融資統計(4月20日)をみると、新規の融資額も前月比3分の1にまで減少した。

禁輸や国際物流網からの断絶といった制裁の影響が顕在化する中、中銀が発表した1万3,526社の非金融企業を対象に実施したアンケート(4月20日)によると、3分の2の企業が輸入部材の調達に支障があると回答した。マクロ経済分析短期予測センターは4月14日に発表した中期経済予測の中で、2022年の固定資本投資が前年比24.5~28.5%減少すると見込んでいる。

(小野塚信)

(ロシア)

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