中銀、金利上昇下の個人向けローン増に抑制の動き

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2022年01月04日

ロシア中央銀行はインフレ対策として主要政策金利を7回連続で引き上げ、12月20日から7.5%から8.5%に上げた(2021年12月22日記事参照)。政策金利の引き上げにより、個人向けローン金利も上昇しているものの、融資総額は伸びており、融資額は当面増加するという見方がある。他方、中銀は家計債務の増加を防ぐ措置強化の必要性を明らかにしている。

中央銀行によると、2021年10月末時点の個人向け短期貸出平均金利は14.94%(前年同月末比0.8ポイント上昇)、満期1年以上の長期貸出平均金利が10.91%(同0.6ポイント上昇)、自動車ローンの短期貸出平均金利が11.37%(同4.1ポイント上昇)、1年以上の長期貸出平均金利が13.47%(同1.2ポイント上昇)だった。

最大手行のズベルバンクなどの金融機関を顧客に持つロシア最大手の信用調査会社である連合信用局の発表(12月21日)によると、1~11月の金融機関の個人向けローン発行額は1,750万件となり、前年同期比で450万件増、伸び率にして34%増加している。

VTBバンクは12月8日、2021年1~11月に実行された自動車ローン件数は93万件超、総額は1兆ルーブル(前年同期比50%増、約1兆5,600億円、1ルーブル=約1.56円)の融資を実行し、2021年末まで融資と取引量が増え続けると発表した。

住宅ローンについて、VTBバンクのイリーナ・カチュリーナ副総裁は12月16日、不動産関連の会合で、政策金利の上昇に伴い多くの銀行が住宅ローンの平均金利を引き上げたと述べた。2021年の貸出平均金利は4月の7.26%から11月は7.43%と徐々に上昇しているが、1~11月の融資額は前年同期比30%増と好調だという。通年の融資額は5兆6,000億ルーブルになる見通しだ(建設業情報サイト「Construction.RU」12月23日)。

金利が上昇しても融資額が増加する中、国家信用履歴局の統計によると、2021年6~7月には借り手の4分の1が3カ月以上の延滞を記録、過去6年間で最大の延滞率になった(「イズベスチヤ」紙8月30日)。中央銀行は12月24日、今後も個人の家計債務残高の増加が続くと予想しており、リスクの高い個人向けローンの制限する措置を拡大する必要があると発表した(タス通信12月24日)。12月6日には中銀に金融機関による無担保消費者ローンの発行を抑制させる権限を付与する連邦法が成立した。2022年1月から施行されている。

(小野塚信)

(ロシア)

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