米USTR、カナダ国際貿易相との会談で乳製品貿易やデジタル課税めぐる懸念表明

(米国、カナダ)

ニューヨーク発

2022年05月11日

米国通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は5月5~6日、カナダを訪問し、同国のメアリー・エング国際貿易・輸出振興・中小企業・経済開発相と会談した。

USTRが発表した声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、両氏は2020年7月に発効した米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の下での協力について議論し、今夏に予定されている自由貿易委員会(2021年5月20日記事参照、注1)での生産的な議論に期待を示した。そのほか、ロシアのウクライナ侵攻への対応における両国の協力などを話し合った。

タイ代表は、カナダがUSMCAを完全に順守することが重要と強調し、その例として、カナダ政府が乳製品輸入に設定している関税割当制度(TRQ)やUSMCA第15章で定められたホームショッピングに関する約束(注2)を挙げた。また、カナダ政府が提案しているデジタルサービス税(DST)や使用されていない住居への課税に対し懸念を表明した。

DSTについては、米国企業を狙い撃ちしているとして、これまでもUSTRがカナダ政府に反対の意を伝えている(2022年2月24日記事参照)。カナダによる乳製品輸入に対するTRQの運用については、米側の主張に基づきUSMCAの紛争解決パネルが1月に協定違反を認める裁定を行った(2022年1月6日記事参照)。カナダ政府はTRQの変更案を公表し、4月までパブリックコメントを募集外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしていたが、米国の議会や関連産業界からは対応が不十分との批判が出ている。タイ代表は、エング国際貿易相がTRQに関する米国の立場を認識していると述べ、カナダ政府高官は、この問題で次に取る行動を数日または数週間以内に明らかにするとの見通しを示した(政治専門誌「ポリティコ」5月5日)。

(注1)USMCAにおいて協定の管理・運用・勧告などを行う閣僚レベルの枠組み。

(注2)USMCA第15章の附属書Dで、カナダは米国が提供するホームショッピングに特化したテレビ番組サービスのカナダでの流通を許可することを約束している。

(甲斐野裕之)

(米国、カナダ)

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