3月は新型コロナ感染拡大で人手不足も、生産活動は堅調さ維持

(ベトナム)

ハノイ発

2022年04月12日

ベトナムの新型コロナウイルス感染者数は3月中旬に過去最高水準に達した。従業員が出社できず、稼働率が下がる工場もみられた。それでも、鉱工業生産指数(IIP、注1)は低下せず、全国的な生産活動の落ち込みは避けられている。

ベトナム統計総局が発表した3月のIIPは173.9だった(添付資料図参照)。1月末から2月初旬が旧正月(テト)休暇だったことも受け、前月比は23%上昇した。前年同月比は8.5%上昇し、昨年10月以降、プラスが続いている。

米国の調査会社S&Pグローバルが発表したベトナムの3月の製造業購買担当者景気指数(PMI、注2)は51.7だった。景気の良し悪しの分け目となる50を6カ月連続で上回り、楽観的な景況感を保った。しかし、前月の54.3からは2.6ポイント低下し、生産の伸びに鈍化がみられた。

2月のテト休暇明け以降、従業員が新型コロナウイルス感染者や濃厚接触者となり、出社できない事態が相次いだ。生産現場では人手不足が起き、生産量を落とさざるを得ない企業も多かった。そのほか、ウクライナ危機を受けた原材料価格の高騰も重荷となった。一方、新規受注の増加に合わせて生産を拡大した企業もあったため、IIPやPMIは堅調な数値を維持した。

新型コロナ感染のピークアウトに期待

新型コロナウイルス新規感染者数(入国者、計上漏れの追加を除く)は3月16日に過去最多の18万人超えとなった。しかし、それ以降は徐々に減少しており、4月初めは5万人前後で推移している。北部の日系製造業では、3月上旬時点で従業員の半数以上が感染し、生産への影響が出ているところが多かったが、既にピークアウトしたとの声も聞かれる。今回の感染が収束すれば、新型コロナ関連リスクは軽減されるとの期待が広がる。

政府は2021年10月以降、ウィズコロナの方針を継続している(2021年10月19日記事参照)。3月に感染者数が過去最高水準になっても、制限緩和の方針を変えなかった。さらに、残業時間上限の規制を緩和するなど、経済回復に向けた新たな施策を打ち出している(2022年4月5日記事参照)。ただし、世界的なインフレ圧力がベトナムにも押し寄せており、今後の懸念材料となっている。

(注1)鉱工業生産指数は、鉱工業の生産を評価する指数で、2015年の生産量を基準(100)に算出する。

(注2)製造業購買担当者景気指数は、製造業の購買責任者を対象に、生産高や新規受注、在庫水準、雇用状況、価格などの状況を評価する指数。0から100の間で変動し、50を超えると「前月比で改善や増加」、50未満は「前月比で悪化や減少」を表す。IHSマークイットが実施していた調査を同社と合併したS&Pグローバルが引き継いでいる。

(庄浩充)

(ベトナム)

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