欧州委、工芸品や工業製品向けの新たなGI保護制度の設置規則案を発表

(EU)

ブリュッセル発

2022年04月15日

欧州委員会は4月13日、EUとしては初となる、原産地の独自性のある真正な伝統的製法で生産された陶磁器、ガラス製品、衣類、宝飾品、家具などの工芸品や工業製品の知的財産を地理的表示(GI:Geographical Indication)として保護する枠組みを規定する規則案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。EUでは、農産品・食品、ワインなどに関しては、特定の国や地域を原産地とし、その品質や評判などの特性とその原産地に結びつきがある場合に、その名称をGIとして登録することで保護する制度(2022年4月7日記事参照)が確立している(注)。

一方で、工芸品や工業製品に関しては、商標での保護や、一部の加盟国法に基づく保護にとどまっている。商標では品質と原産地のつながりを保護できず、またEU全体での統一的な保護も必要なことから、欧州委は今回の規則案を提案したとしている。規則案では、工芸品や工業製品に対しても、農産品などに対する既存のGIと同等の保護を認めるとしており、模倣品対策に加えて、認定された工芸品や工業製品の認知度の向上、原産地での観光の活性化、伝統的な製法の後継者の確保、文化遺産の保護などが期待される。欧州委は、想定される保護対象産品の例として、ムラーノガラス(イタリア)、リモージュの磁器(フランス)、ゾーリンゲンの刃物類(ドイツ)などを挙げている。

規則案では、工芸品や工業製品がGIの認定を受けるためには、(1)特定の地域、地方、国を原産としており、(2)品質、評判、その他の特性が、原産地に本質的に帰属しており、(3)製造工程のうち少なくとも1つの工程が、指定地域において実施されていることが必要となる。

工芸品や工業製品がGIの認定を受けた場合、認定外の類似品によるGIの商業的な利用などから保護される。また、実際の原産地が表記されている場合でも、「~風」や「~のような」といったGIを想起させるような表記による悪用や模倣、包装・広告資料・ウェブ上の情報などにおける、原産地・性質・品質の本質的な部分などに関する間違った、あるいは誤解を招く表記などからも保護される。これらの違反に対しては、加盟国は、罰金などを定めた上で、適切な行政手続きあるいは司法手続きをとることが求められる。また、規制案では、現在審議中のデジタルサービス法案(2020年12月22日記事参照)にも言及しており、加盟国は、規制案のオンライン上の違反に対しても、デジタルサービス法案に基づく是正措置を命ずることができるとしている。

欧州委は、本規則の2024年1月からの適用開始を想定し、規則案は今後、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会で審議される。

(注)詳細は、調査レポート「EUの地理的表示(GI)保護制度PDFファイル(735KB)」を参照。

(吉沼啓介)

(EU)

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