アルゼンチンとの自動車協定の第7次追加議定書を公布、無関税枠と原産地規則を維持

(メキシコ、アルゼンチン、ブラジル)

メキシコ発

2022年04月07日

メキシコ経済省は4月5日、2022年3月18日に締結されたラテンアメリカ統合連合(ALADI)経済補完協定(ACE)第55号付属書I(通称「メキシコ-アルゼンチン自動車協定」)の第7次追加議定書を連邦官報で公布した。完成車や自動車部品の域内原産割合(RVC)の閾値(いきち)は、従来の35%が2025年3月18日まで維持される。2025年3月19日以降に適用されるRVCの閾値と計算公式については、今後、両国間で交渉して決定される(議定書第4条)。カーオーディオやギヤボックスなどの特定自動車部品に適用されていたRVCの軽減措置も継続される(第7条)。完成車の新モデルについての販売開始から2年間の時限的RVC軽減措置(20%)も変更がない(第6条)。

アルゼンチン向けでは、自動車部品の原産地規則に関税分類変更基準(CTC、通称タリフジャンプ)が適用でき、タリフジャンプを適用して原産品と見なすことも可能。また、従来どおり、完成車に組み込まれる自動車部品の原産性を判断する基準としては、(1)4桁レベルのCTC、もしくは、(2)FOB取引価額に占める非原産材料の価額が50%以下、が適用される(議定書第5条)。原産地規則の詳細は、添付資料の表を参照。

第7次追加議定書の締結により、メキシコとアルゼンチンの間では完成車の無関税輸入割当も3年間維持されるが、その金額は2021年度(3月19日~翌年3月18日)の7億7,312万5,578ドルが変更されずに、今後3年間維持される。過去5年間のメキシコからアルゼンチンへの完成車輸出額をみると、2017年が最高の6億5,448万ドルで、それ以降は減少傾向だ。2017年時点の輸出額でも割当額の84.7%に過ぎないため、影響は少ないとみられる。

追加議定書は2022年3月19日に発効しているが、3月18日までに第6次追加議定書の下で原産地証明書の発給を受けた完成車および自動車部品については、3月19日から60日(暦日)間は原産地証明書の発給をあらためて申請することなくACE55号の特恵関税が享受できる(議定書第9条)。

ブラジルとの自動車協定は、ACE53号の交渉次第

メキシコは、ブラジルともACE55号付属書II(メキシコ-ブラジル自動車協定)を締結しており、メキシコからブラジルへの完成車輸出はアルゼンチンへの輸出額の2.6倍に達する。自動車部品の輸出額も大きく、メキシコ進出日系自動車部品企業10社以上がブラジルに輸出を行っている。しかし、2015年以降、自動車部品の原産地規則が厳格になり、また、2019年以降はRVCの閾値も40%に引き上げられたため、進出日系企業の多くがブラジルとの協定を活用できていない。

メキシコ政府はブラジル政府との間で、RVCの計算公式変更を交渉しているが(2020年6月19日記事参照)、メキシコ経済省のフェリックス・ゴンサレス市場アクセス局長によると、ブラジル側からはもう1つの経済補完協定であるACE53号の対象品目を拡大し、ブラジルに輸出競争力がある農産品の関税譲許をメキシコ側に求めている。メキシコは、ブラジルに対しては農業がセンシティブであるため、同交渉は進展しているとはいえず、自動車および自動車部品の原産地規則緩和が実現するのはまだ先になりそうだ。

(中畑貴雄)

(メキシコ、アルゼンチン、ブラジル)

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