ブラジル食肉加工大手JBS、自社の有機廃棄物で肥料の国内生産開始

(ブラジル、ロシア、ウクライナ)

サンパウロ発

2022年04月07日

ブラジルの食肉加工大手JBSは3月22日、同日付自社の公式リリースで、肥料の国内生産と販売を開始したと発表した。リリースで「グループ会社内で排出される有機廃棄物を原料として肥料を生産するブラジル初の食品グループ会社となった」と説明した。自社内の有機廃棄物の約25%を肥料の原料として使用することで、環境負荷の低減につなげる。投資額は1億3,400万レアル(約36億1,800万円、1レアル=約27円)。

具体的には、JBSグループのカンポ・フォルチ・フェルチリザンチス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますがサンパウロ州北西部に位置するグアイサラ市の工場で年間約15万トンの肥料を生産する見込み。はじめは大豆やトウモロコシ、コーヒー、サトウキビ、園芸作物用肥料、牧草地や森林での林業肥料の生産と販売に注力するという。

3月18日付現地紙「バロール」によると、カンポ・フォルチ・フェルチリザンチスのスサナ・カルバーリョ新ビジネス部長は「動物の排泄物のほか、牛肉や豚肉、鶏肉などの食肉加工プロセスで不要となったものを有機廃棄物として使用できる」と述べている。

同社は、JBSグループの有機廃棄物を肥料の原料として循環させることで、持続可能な肥料が生産できると説明している。また、カーボンフットプリント(注1)の観点から、低炭素な肥料を生産できることを利点に挙げた。これらを踏まえ、JBSグループは、今回の投資が2040年に向けてネットゼロを目指す戦略に沿うものと位置づけた。

ブラジルで使用される肥料の85%は外国からの輸入に頼っており、その主要な輸入元はロシアだ。ウクライナ情勢により肥料の供給不足が懸念される中、JBSグループによる肥料の生産開始時期は、政府が国家肥料計画を打ち出し、肥料の国産化を目指した直後のタイミングとなった(2022年3月22日記事参照)

JBSグループの肥料生産工場は2020年7月から建設が開始されていた。今回の事業開始は、ウクライナ情勢をきっかけとしたものではなく、また、年間15万トンが見込まれる生産量は、ブラジルの年間肥料輸入量(注2)をカバーできるほどではない。ただ、肥料国産化へのノウハウや肥料そのものへの需要が増している中での生産と販売開始となる。

(注1)環境省によれば、カーボンフットプリントとは製品のライフサイクル全体で排出された温室効果ガス排出量を合算し、それをCO2排出量に換算して表示したもの。

(注2)ブラジル全国肥料普及協会(ANDA)の公式サイトによれば、2021年にブラジルが輸入した肥料は3,920万トン。

(古木勇生)

(ブラジル、ロシア、ウクライナ)

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