ブラジルの国家肥料計画が施行、ウクライナ情勢で懸念高まる肥料の確保を目指す

(ブラジル、ロシア、ウクライナ、ベラルーシ)

サンパウロ発

2022年03月22日

ブラジル政府は3月11日、同日付で「国家肥料計画2022-2050」(政令第10,991号)を施行した。目的は、肥料の国産化を促進し、海外からの輸入依存度を下げるためだ。具体的には、2050年までに肥料の輸入割合を45%に低下させるという。ブラジル全国肥料普及協会(ANDA)の公式サイトによれば、ブラジルで使用される肥料の85%は海外からの輸入に依存している。経済省貿易統計COMEXSTATによれば、ブラジルが2021年に輸入した肥料の主な輸入元はロシア、中国、カナダ、モロッコ、ベラルーシなど(注)。

同計画を発表した、テレザ・クリスチーナ農業・畜産・供給相は「(肥料の)自給自足のみを目指すのではない。課題への対応力を養い、ブラジルのアグリビジネスを守りたい」と、意気込みをみせた。

同計画は、大統領府戦略問題特別局の管轄下に新設される国家肥料・植物栄養委員会(CONFERT)が担当する。CONFERTでは、具体的には、税制の見直し、研究開発やイノベーションの実施、投資環境の改善、インフラやロジスティクスの拡大に向けた計画策定などが挙げられている。各措置の詳細は今後、発表される見込み。

直近で開始されるものとしては、ブラジル農牧研究公社(EMBRAPA)との連携で実施される「EMBRAPAフェルチブラジル・キャラバン」だ。本プログラムでは、肥料を効率的に使用するべく、EMBRAPAの専門家が4月以降に全国140以上の市町村を訪問し、農場での肥料の使用方法を調査しつつ農家へ指導を行う予定。

「国家肥料計画2022-2050」の策定に向けては、既に2021年1月22日付の政令第10,605号により動きがあった。ただ、2022年3月11日付EMBRAPAの公式サイトによると、「(肥料の)国外からの輸入が、ロシアとウクライナの対立によって悪化」しており、「EMBRAPAフェルチブラジル・キャラバン」のようなプログラムを実施しながら、中短期的に輸入依存度を下げる必要性に触れている。

サンパウロ大学応用経済研究所(CEPEA-USP)の公式サイトによれば、アグリビジネスはブラジルの2020年GDPの26.6%を占めている。また、米国農務省(USDA)の2022年2月9日付「ブラジル経済・農業概要」では、「ブラジルは農業製品の重大な生産者および輸出者で、世界の食糧安全保障への取り組みをリードできる数少ない国の1つ」と言及されている。

(注)ブラジルが、2021年に輸入した主な肥料は以下のとおり。

  1. 窒素肥料(鉱物性肥料および化学肥料に限る)(HSコード3102):輸入相手国上位3カ国は、ロシア、カタール、中国。
  2. りん酸肥料(鉱物性肥料および化学肥料に限る)(HSコード3103):主要な輸入相手国は、中国、エジプト、モロッコ。
  3. カリ肥料(鉱物性肥料および化学肥料に限る)(HSコード3104):主要な輸入相手国は、カナダ、ロシア、ベラルーシ。
  4. 肥料成分(窒素、りんおよびカリウム)のうち2つ以上を含有する肥料(鉱物性肥料および化学肥料に限る)および、その他の肥料、ならびにこの類の物品をタブレット状その他これに類する形状にし、または容器ともの1個の重量が10キログラム以下に包装したもの(HSコード3105):輸入相手国上位3カ国は、モロッコ、ロシア、中国。

(エルナニ・オダ)

(ブラジル、ロシア、ウクライナ、ベラルーシ)

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