2021年の貿易額は前年比29.2%増、縫製業が回復

(カンボジア)

プノンペン発

2022年04月21日

ジェトロが3月にカンボジア商業省(MOC)から入手したデータによると、2021年の貿易額は、前年比29.2%増の約462億7,500万ドルだった。輸出額は前年比2.1%増の約175億7,200万ドル、輸入額は同54.4%増となる約287億300万ドルだった。

輸出を品目別でみると、主要輸出品目の織物・ニットを含む衣料品が前年比8.1%増と好調で、輸出全体の45.6%を占めた(80億1,800万ドル)。革製品・かばん(58.9%増)が輸出全体の9.0%、履物(24.7%増)が7.9%、毛皮・毛皮製品(約1.4倍)が2.7%を占め、基幹産業である縫製業関連が輸出の65%以上を占めた。2021年は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、世界的に需要が低迷したことで、縫製業は打撃を受けたものの、米国やカナダ、オランダ向けを中心に、輸出が緩やかに回復している。その他、電気機器・部品、車両・部品の輸出も堅調に伸びている(添付資料表1参照)。

輸入を品目別に見ると、宝石・宝飾品が前年比約10倍超となり(59億9,300ドル)、輸入全体の20.9%となった。宝石・宝飾品の輸入の99.1%が金で占める。金の国際価格の上昇などを受け、資産保全性が高い金の需要が高まったことが原因と考えられる。また、新型コロナウイルス感染症への対応として、医薬品やワクチンなどの医療用品の輸入が伸びた。その他、衣料品の原料となるニット繊維や人造繊維も、前年比でそれぞれ3割近く増加。2021年には減少していた車両の輸入も増加している(添付資料表2参照)。

国・地域別にみると、輸出では米国向けが74億9,000万ドルと、旅行用かばんを含む縫製品などを中心に前年比42.4%増加。輸出全体の42.6%を占め、引き続き最大の輸出相手国だった。2位の中国は39.0%増の15億1,000万ドルで、縫製品のほか、果物やナッツ類、穀物などの食品の輸出が好調だった。3位の日本(3.6%増)は、衣料品、履物、革製品のほか、電気機器・部品の輸出が牽引した(添付資料表3参照)。

輸入では、中国が37.0%増(96億3,400万ドル)と、前年に続き最大の輸入相手国だった(シェア33.6%)。また、宝石・宝飾品の輸入拡大を背景に、シンガポール、スイスからの輸入はそれぞれ5.3倍、約60倍となった。日本からの輸入(8位)は、肉類や車両・部品の輸入が伸びたものの、全体では4.7%減少の6億700万ドルだった(添付資料表4参照、2022年2月3日記事参照)。

カンボジアの貿易については、EUが一部停止している一般特恵関税(EBA、注)や、更新が待たれる米国の一般特恵関税(GSP)の影響を受け、縫製品の輸出が減少することが懸念されていた。2021年に関しては、特に大きな影響が見られなかったが、今後も引き続き注視する必要がある。

(注)国連が規定する後発開発途上国を対象に、EUに輸入される武器兵器以外の全ての製品の輸入関税を無税とし、輸入割り当ても行わないとするEU独自の特恵関税制度。2020年8月12日以降は、カンボジアからEUに輸出する衣料品と履物の一部、旅行用品、砂糖に対して、EUの最恵国税率に基づく一般関税が課せられている。

(井上良太)

(カンボジア)

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