BEVの新車購入補助制度、BEV普及に寄与したことが明らかに

(ドイツ)

ミュンヘン発

2022年04月25日

ドイツの主要経済研究所の1つであるドイツ経済研究所(DIW)は4月13日、バッテリー式電気自動車(BEV)購入時の補助について、その効果の分析結果を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

ドイツ連邦政府は、2016年7月に補助制度「環境ボーナス(Umweltbonus)」を導入した。これはBEV、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCEV)を購入した際、連邦政府と自動車メーカーが補助額を折半で負担するもの。2019年11月には、同制度を2025年まで延長するとともに補助額を増額した。さらに、2020年7月からは、連邦政府負担分を倍増し、最大9,000ユーロが助成されている(2020年7月15日記事参照)。連邦政府は2021年12月、連邦政府分の補助額を倍増する措置を2022年末まで延長すると発表した(2022年1月12日記事参照)。

DIWは今回、助成対象のうちBEVと内燃機関搭載車を比較することで、補助制度の導入効果を分析した。この結果、同制度はドイツ国内の新車登録台数に占めるBEVの割合増加に寄与した一方、内燃機関搭載車への需要減をもたらしたとした。季節変動や景気変動の影響を考慮しても、この結論は変わらないという。

ドイツ連邦自動車局(KBA)によると、BEV新車登録台数は、2018年は3万6,062台、2019年は6万3,281台にとどまった一方、2020年には19万4,163台、2021年には35万5,961台と急増した。新車登録台数に占めるシェアは2018年の1.0%から2021年には13.6%に伸びている。他方、ガソリン車のシェアは2018年62.4%から2021年37.1%、ディーゼル車のシェアは2018年32.3%から2021年20.0%に低下している。

DIWの分析によると、BEVの新規登録台数の増加には車両価格が4万ユーロ未満のBEVが寄与したという。当該価格帯のBEVの新規登録台数は2019年1月に約5,000台だったものが、2020年12月には約4万台まで増加した。当該価格帯のBEVを購入する場合、9,000ユーロの助成が受けられる。また、DIWによると、供給面からもBEVのモデル数は2019年末の30モデルから2021年に59モデルと倍増したという。一方、内燃機関搭載車のモデルは2019年初の295モデルから2021年には253モデルに減少した。

2021年12月に発足したドイツ新政権は、2030年までにBEVをドイツ国内で少なくとも1,500万台普及させる目標を掲げている(2021年12月6日記事参照)。DIWは、補助制度がBEV普及に寄与したことは認めつつも、政府目標を達するためには、計算上、毎月約13万台のBEVの新規登録が必要な一方、2021年平均では月当たり約3万台にとどまるとし、目標達成には、充電インフラの整備や化石燃料に対する適切なカーボンプライシングなど、さらなる措置が必要と指摘している。

(高塚一)

(ドイツ)

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