第1四半期の乗用車生産台数は前年同期比18.9%減、ウクライナ情勢が影響

(チェコ、ウクライナ、ロシア)

プラハ発

2022年04月27日

チェコ自動車工業会の4月21日付発表によると、2022年第1四半期の国内乗用車生産台数は26万9,090台で、前年同期比18.9%減少外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、第1四半期の実績としては2011年以降の最低を記録した(添付資料図参照)。同工業会はその要因を、一部の部品の不足、およびロシアのウクライナ侵攻による不確実性と部品の不足だと分析している。

同工業会のマルチン・ヤーン会長は「ロシアのウクライナ侵攻の顕著な影響としては、ワイヤーハーネスの不足による生産の制限が挙げられる。また、半導体チップの不足も依然として大きな問題となっている」と説明している。ウクライナはワイヤーハーネスの主要輸入先の1つで、2021年の同国からの輸入額は1億6,856万ユーロ(全輸出額の12%)を占め、ルーマニア、スロバキアに次いで第3の輸入相手国だった。

第1四半期の実績をメーカー別にみると、最大メーカーのシュコダ・オート〔フォルクスワーゲン(VW)グループ〕の生産台数は16万2,640台で、前年同期比27.8%減少した(添付資料表参照)。また、トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・チェコ(TMMCZ)は21.7%減の3万2,149台だった。同社は、2021年11月の「ヤリス」の生産開始に加えて(2021年11月12日記事参照)、2022年に入ってからは新モデル「アイゴX」の導入準備を進め、3月に製造を開始している。一方、現代チェコは13.1%増の7万4,301台を生産し、2021年に引き続き増加傾向を維持した。同社は、ウクライナのサプライヤーがいないため、同国情勢の直接的な影響は受けていないと説明している。

一方、第1四半期における電気自動車(EV)の生産台数は、バッテリー電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)を合わせて2万4,821台で、全生産台数に占める割合は9.2%にとどまり、前四半期(2021年10~12月)の11.1%より減少した。シュコダ・オートは3月29日、ウクライナからの部品供給の停止により、同社のBEVモデル「エニヤックiV」の生産が一時停止状況にあることを発表している。

自動車工業会のヤーン会長は、自動車部門における問題は部品不足およびサプライチェーンの混乱にとどまらないと指摘している。「むしろ、これよりも大きな問題は、エネルギー、燃料価格の高騰だ。さまざまな部品の価格も、生産に用いる原料の価格高騰により必然的に上昇する。これにより企業によっては、生産コストが年間1,000万~1億コルナ(5,700万円~5億7,000万円、1コルナ=約5.7円)単位で増大する可能性がある。そのため、われわれは、特に状況が逼迫しているサプライヤー部門における効果が期待できることから、短時間労働制度(注)の発動を政府に対して要請している」と同会長は述べている。

(注)2021年7月1日に導入された、経済危機や自然災害などで企業が雇用を維持することが困難になった際に適用される制度(Kurzarbeit)。発動は政府が決定する(2021年7月2日記事参照)。

(中川圭子)

(チェコ、ウクライナ、ロシア)

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