携帯電話の強盗被害報告件数が増加傾向へ

(ブラジル)

サンパウロ発

2022年04月26日

ブラジルのサンパウロ州公安局(SSP)が4月19日時点で公開している犯罪に関する統計指標によると、2022年1月と2月の携帯電話の強盗被害報告件数は前年同期比で8.5%増、2020年同期比で4.5%増加した(注1)。

4月13日付現地紙「バロール」は、サンパウロ州で携帯電話の強盗被害報告件数が増加したことについて、犯罪者は携帯電話本体を違法に売買するのみならず、携帯電話を使って操作できる中央銀行主導の即時決済システム「ピックス」(2020年12月1日記事参照)で素早く不正に送金することや、携帯電話の持ち主の銀行口座情報や個人情報を抜き出すなど、犯罪の目的が多様化していると分析した。

同州のマウリシオ・フレイレ警察署長は同紙のインタビューで「携帯電話は、これまで機器自体に価値があるものとして犯罪者は捉えていたが、銀行関連のアプリケーションなどが携帯電話に集約されるようになってきたため、携帯電話の中にある持ち主の情報の方がより価値を持つようになってきている」と説明している。

同州での携帯電話を狙った強盗は従来からある犯罪の1つだ。ただ、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、「ピックス」や携帯電話アプリによるフードデリバリーサービスが普及したことに伴い、関連する犯罪が増加しているとみられる。これに伴い、「ピックス」の送金額上限の設定の見直しや、デリバリー配達員を装った強盗への注意がより必要になっている。

こうした犯罪に対し、インシュアテック(InsurTech)企業による保険サービス利用も対策の1つとなっている。例えば、ピエール・セグラドーラは2018年に創設されたブラジルのスタートアップ企業で、2020年12月に国内で初めて、保険分野の行政を監督する保険監督庁(SUSEP)に、規制サンドボックス制度の対象として3年間の期限付きでビジネスを許可された。同社は、従来の保険会社が求める被害にあった際の自己負担費用について、業務のデジタル化によるコスト削減メリットを生かし、被保険者が月額料金以外のコスト負担なしに迅速に補償を受けることができるサービスを提供している。

3月31日付現地紙「バロール」によると、2021年にピエール・セグラドーラが提供する携帯電話向け保険サービスに加入した顧客数が増加傾向にあると報じている(注2)。

(注1)SSPが公開しているデータによると、携帯電話の「強盗(暴力を伴う)」被害報告件数(各年1月と2月の合計)は、2022年が1万9,862件、2021年が1万8,303件、2020年は1万9,003件。暴力を伴わずに携帯電話を取り去る「盗難」の分類と区別している。

(注2)3月31日付現地紙「バロール」によると、ピエール・セグラドーラの顧客数は約10万人。そのうち、携帯電話の保険サービスに加入している顧客は約7割。

(古木勇生)

(ブラジル)

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