地場系EC企業「ロコマリ」、書籍販売・購入のオンライン化が進展

(バングラデシュ)

ダッカ発

2022年04月07日

近年、著しい成長を遂げるバングラデシュの電子商取引(EC)市場は、「新型コロナ禍」でさらに拍車がかかり、都市部を中心とした国民生活に浸透しつつある(2021年6月14日付地域・分析レポート参照)。例えば、書籍販売の地場系ECサイト「ロコマリドットコム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(rokomari.com、以下、ロコマリ)」は2011年以降、ボイメラ(本の祭典)(2022年3月4日記事参照)の開催時期に合わせ、モバイルファイナンスサービス(以下、MFS)と連携した独自の「ボイメラ」を行なうなど、当地で注目されている企業の1つだ。

そこでジェトロは、ロコマリのコミュニケーション・インバウンドマーケティング部のマフムデュル・ハサン・サディ部長に、現在の取り組みや今後の展望について聞いた(3月21日)。

(問)設立の背景、現在の取り組みは。

(答)当社は、地場のグループ企業(2022年2月4日記事参照)であるオンノロコム(OnnoRokom)グループ傘下のベンチャー企業の1つだ。2011年12月に、書籍販売のウェブサイトを立ち上げ、出版社や地場系物流会社のシュンドルボン・クーリエサービス(Sundarban Courier Service、以下、シュンドルボン)と、販売事業に係る協定を締結。当社はEC業界で初めて、ダッカ市内で代引き(COD:キャッシュ・オン・デリバリー)システムを導入したが、これはシュンドルボンとの連携によるものだ。現在、インド、中東諸国などの外国書籍を含む20万冊以上を、常時オンラインで販売している。

(問)貴社の配送システムや課題は。

(答)顧客サービスチームと運送チームで、配送業務を行っている。顧客サービスチームは、注文を受けて、まず顧客情報を確認する。そして住所や連絡先を確認しつつ、在庫の有無や配送予定、配送中の書籍の位置情報などを顧客に共有する。購入履歴がある顧客に対しては既存の情報に基づき、より迅速な配送が可能となっている。さらに、チャットなどを活用した顧客とのコミュニケーションにより、サービスの効率を高めている。顧客サービスチームは、24時間年中無休で稼働しており、受注の際は運送チームが在庫確認と当社倉庫への配送を行う。当社には、絶版の書籍や、出版社の都合ですぐに入手できない書籍のオーダーもあるため、自社ネットワークを活用し、可能な限り調達を試みている。このことが大幅な配送予定の遅延につながっており、当社にとって大きな課題の1つだ。

(問)貴社独自の「ボイメラ」の概要は。

(答)当地の一大文化イベントであるボイメラに足を運ぶことができない人々のため、毎年、同祭典の開催時期に合わせて、新品の書籍をおおむね25%割引で販売している。加えて、今年の自社「ボイメラ」(2月6日から3月31日まで開催)では初めて、MFS(モバイル金融サービス)大手のノゴド(Nagad)(2021年6月23日付地域・分析レポート参照)と連携した。ノゴドで支払いの場合、購入代金の20%相当分のオンライン上のキャッシュバック〔最大150タカ分(約210円、1タカ=約1.4円)〕を本イベントに使途を限定するかたちで、提供している。今年の自社「ボイメラ」の売り上げは、2021年の当社の年間売上高の37%に相当し、同祭典は社内でも重要な位置付けにある。

(問)今後の取り組みと展望は。

(答)バングラデシュのEC市場は、今後も大きく発展する可能性が期待できる一方で、事業者間の競争が一層激しくなることが予想される。当社は今後、特に学術書や参考書といった教育分野に関する書籍の販売に注力していく考えだ。

ジェトロがダッカ在住のロコマリ利用者にヒアリングしたところ、「ロコマリでは小説から料理本まで、幅広い分野の書籍が検索でき、実際に書店に足を運ぶよりも、興味のある書籍を簡単に見つけることが可能。ボイメラのキャンペーンを含む、様々な割引サービスも特徴の1つだ。今後の教育分野の書籍販売にも期待している」と話しており、同社の取り組みが引き続き注目される。

(イスラット・ジャハン、八百板翼、山田和則)

(バングラデシュ)

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