米企業の7割で賃上げ実施、中小企業の4割が10%以上の値上げ計画、米民間調査

(米国)

ニューヨーク発

2022年04月27日

全米企業エコノミスト協会(NABE)が4月25日に公表した2022年第1四半期(1~3月)の経営状況に関するアンケート調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、回答企業の7割が同四半期に賃上げを実施したことが明らかになった。また、同日に公表された全米独立企業連盟(NFIB)の調査では、回答した中小企業の4割が販売価格を今後10%以上引き上げることを計画しており、賃金や調達価格などのコスト高を価格に転嫁させようとする企業の姿勢が鮮明になっている。

NABEの調査は4月4日から12日に実施され、賃上げしたとの企業の割合は70%と、前回1月調査(60%)から10ポイント増加し、過去40年間の調査史上最も高い数値となった。また、約6割の回答企業は売上高が増加したと回答しているものの、賃金や材料などのコスト高の影響から利益率の減少が見込まれており、利益率に関するネットライジング指数(NRI)は2020年10月以来の最低となっている。

NBIFの調査は540人の中小企業事業者を対象に4月14日から4月17日に実施され、回答企業の86%が既に商品・サービス価格の引き上げを行った一方で、84%が収益の減少を経験したと回答している。さらに、今後3カ月で販売価格を引き上げるとの回答は68%、検討中は22%、その引き上げ幅については40%が10%以上の引き上げ、47%が4~9%の引き上げと回答している。また、回答企業の31%が毎週、21%が毎月、20%が数カ月ごとに現在の価格の妥当性を見直していると回答した。

NABEの前回調査でも賃上げを実施したとの回答は既に7割近く、値上げを実施したという回答は5割強に達していたが(2022年1月27日記事参照)、今回の両調査で、賃金上昇圧力は引き続き強く、これが値上げ圧力につながっている現状がより一層明らかになった。賃上げに関連して、米国では最近になって労働組合結成の動きが相次いでいる。労働条件改善を求め、スターバックスでは全米の各店舗で労働組合結成の動きが続いているほか、アマゾンでもニューヨーク市スタテン島にある物流拠点で労組結成の従業員投票が可決された。アップルでも労働組合結成を模索する動きがあり(「ワシントン・ポスト」紙電子版2月18日)、こうした動きに際して会社側は10%以内の昇給を提示したとされている(ブルームバーグ2月11日)。バイデン政権も、労働組合の加入率向上と組織強化のためのタスクフォースを創設するなど、こうした動きを後押ししているが、上記調査で明らかになったとおり、賃上げなど雇用条件の改善は企業収益を圧迫、価格転嫁を引き起こし、現在の高インフレを助長させる可能性もある。11月の中間選挙を前に、雇用条件の改善などで支持者に訴える必要性がある一方で、高インフレを抑制させる必要性もあり、バイデン政権にはバランスの取れた政策運営が求められている。

(宮野慶太)

(米国)

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