高額消費に買い控えの動き、企業の半数は値上げを実施、米NY連銀など調査結果

(米国)

ニューヨーク発

2022年01月27日

米国ニューヨーク連邦準備銀行(NY連銀)が1月24日に公表した2021年12月の家計支出調査において、消費者が高額消費を控えている傾向が明らかになった。同調査は4カ月ごとに行われる約1,300世帯を対象にしたアンケート調査で、2013年から実施されている。

12月の調査結果では、過去4カ月間に高額消費を行った世帯の割合は58.1%と8月調査の62.6%から低下した。内訳では、旅行(8月27.8%→12月19.6%)、住宅修繕(8月24.9%→12月21.5%)で低下が大きい一方、電化製品(8月20.2%→12月25.0%)は上昇した。これら高額商品の今後の支出見込みの質問でも、旅行(8月29.1%→12月22.4%)、住宅修繕(8月25.0%→12月21.2%)は低下した一方、電化製品(8月16.9%→12月17.8%)は上昇している。

また、毎月の家計支出額の前年比の中央値は5.1%増と、2014年12月の調査開始以来最大となった。今後の同支出見込みについても4.6%増と2015年8月の調査開始以来最高水準になっており、特に生活必需品への支出見込み額の前年比の中央値が5.4%増と高く、こちらも同年同月の調査開始以来の最高水準となっている。人々は生活必需品についてはインフレ(注)を受け入れざるを得ない一方、旅行や住宅関連など先送りできる高額消費については足元のインフレを考慮して控えようとしており、NY連銀はこうした傾向について、「インフレ期待の高まり」が影響している可能性が高いと指摘している。

実際に、企業側では値上げが進んでいる。全米エコノミスト協会が実施した2021年第4四半期の経営状況に関するアンケート調査によると、値上げを実施したとの回答は全体の53%で、調査開始以来最も高い割合となっており、今後3カ月で価格がさらに上昇するとの回答も過半数に上る(ブルームバーグ1月24日)。値上げの背景には、原材料費の高騰に加えて人手不足による賃金上昇があり、賃金を上げたと回答した割合は68%と約3分の2を占めている。さらに、相対的に賃金の高い熟練労働者が不足していると回答した割合は57%となっていることから、今後も賃金上昇が続く可能性がある。また、自社の今後の見通しに対する最大の負のリスク要因としては、新型コロナウイルスの感染者数増加を挙げる企業が36%と最も多く、次にコスト上昇圧力(30%)や金利上昇(16%)が続いている。一方で、サプライチェーンの混乱を挙げた回答者は12%となっており、前回10月調査の20%から減少している。

(注)米国労働省の発表によると、2021年12月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比7.0%上昇し、1982年6月以来最大の伸び率を記録している(2022年1月13日記事参照)。

(宮野慶太)

(米国)

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