台湾企業の域内投資が7兆円を突破、炭素排出削減対応も活発に

(台湾、中国)

中国北アジア課

2022年04月20日

台湾当局は2019年から台湾企業の域内投資に際して優遇を行う「台湾投資三大方案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を実施している(2019年12月25日付地域・分析レポート参照)。三大方案は、中国への投資実績がある台湾企業の台湾回帰を優遇する「歓迎台商回台(台湾回帰)投資行動方案」に加え、対中投資実績のない大企業や中小企業にも対象を拡大した「根留台湾企業加速投資行動方案」「中小企業加速投資行動方案」の3方案からなる。

外資系企業や台湾企業の台湾投資をサポートするため、経済部を中心に省庁横断的に組織したInvesTaiwanの発表によると、「台湾投資三大方案」を利用した台湾企業の投資金額は4月15日時点で累計1兆6,771億台湾元(約7兆3,792億円、1台湾元=約4.4円)に達した。このうち、台湾回帰投資の金額は3月31日時点で累計1兆449億台湾元だった。

「台湾投資三大方案」は2021年末を期限としていたが、台湾企業のニーズが高いことから、2024年12月31日まで延長された。延長期間では、それまで対象分野としてきたスマート機械や、アジアシリコンバレー関連〔IoT(モノのインターネット)〕、グリーンテクノロジー、バイオ、新農業、国防、循環経済(新材料)関連に加え、2050年カーボンニュートラル目標への協力が条件になり、申請企業には炭素排出削減計画の提出が義務付けられている。

台湾は2021年4月に、2050年までのカーボンニュートラル実現を表明。2022年3月には実現に向けたロードマップも発表した(2022年4月4日記事参照)。2022年1月以降に三大方案投資案件として採択された案件では、さまざまな炭素排出削減策を組み込んだ投資計画が承認されている。

具体的な投資事例としては、台湾の2大製紙企業の1社である栄成紙業は、35億台湾元を投じて桃園と台中の工場にグリーン・低炭素包装紙製造ラインを設置する。回収した紙ごみを原料とすることに加え、廃棄物固形燃料(SRF)を使用し、熱源から電力と熱を生産・供給するコージェネレーションシステムの導入により、炭素排出削減に貢献する。また、磁性材料の製造・販売を行う新秀波磁能は4億台湾元を投じて新北市と桃園の工場に省エネ設備を設置してスマート製造ラインを増設するほか、工場の外には太陽電池も増設し、環境にも配慮した投資を行う。

台湾域内への投資の増加に伴い、工業用地需要も年々高まっている。世界最大の事業用不動産サービス会社と投資顧問会社であるCBREによると、2021年下半期の台湾の工業用地取引額は前年同期比27%増の950億台湾元で、史上最高額となった。従来、工場用地不足が指摘される中、台湾当局は用地の確保・供給に力を入れている。経済部工業局のウェブサイトでは、賃貸・購入可能な産業用地情報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを検索することができる。

(江田真由美)

(台湾、中国)

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