米運輸省道路交通安全局、韓国LGES製バッテリー搭載車の調査開始

(米国、韓国、カナダ)

米州課

2022年04月11日

米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)が4月5日に、韓国LG化学の電池子会社で世界シェア2位のLGエネルギーソリューションズ(LGES)が開発したバッテリー搭載の車両13万8,324台について調査を開始したと複数のメディアが報じた。同調査は、ステランティス、フォルクスワーゲン(VW)、ゼネラルモーターズ(GM)、現代自動車、メルセデス・ベンツの5社が2020年2月以降、同バッテリーの火災リスクを理由にリコールを実施したことに対する取り組みとなる。

NHTSAは4月1日に、各社からLGES製バッテリーの安全上の欠陥について、報告を受けてきた経緯の文書を発表した。同文書によると、最近ではVWの2021年製電気自動車(EV)「ID.4」が、LGES製バッテリーのはんだ付けが不十分なため接続に不備があり、運転中に故障や失速が発生したと通知している。LGESの広報担当者はNHTSAの調査について声明を発表し、「NHTSAの要求は、フォローアップ手続きだと理解している。わが社は調査に対して全面的に協力する」と述べている。

他方、LGESは継続して米自動車メーカーとの協業を進展させている。同社とGMの合弁会社アルティウムセルズは2022年1月26日、ミシガン州に米国3カ所目となるバッテリー工場を建設すると発表した(2022年2月1日記事参照)。また、LGESは3月23日、ステランティスと合弁会社を設立し、カナダのオンタリオ州にEV用バッテリー工場を建設する外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますと明らかにした。この工場建設には、50億カナダ・ドル(約4,900億円、Cドル、1Cドル=約98円)を投じ、2024年第1四半期(1~3)中の稼働開始を目指すという。同工場で生産したリチウムイオン電池セルと電池モジュールはステランティスの北米生産にとって重要な役割を果たすとみられる。フォードは同じく韓国企業のSKオン(旧SKイノベーション、注)とテネシー州、ケンタッキー州でバッテリー工場を建設(2021年9月29日記事参照)しており、米国の完成車メーカーと韓国のバッテリーメーカーの協業が加速している状況だ。

ジョー・バイデン大統領は2021年1月の就任当初から、政権の優先課題の1つに気候変動対策を掲げ、輸送部門でも温室効果ガス排出量削減に注力しており、米韓企業間の連携は米国における自動車のEV化をさらに推進するものと考えられる。

(注)SKイノベーションは2021年10月1日に分社化し、バッテリー事業の新会社SKオンが発足した。

(片岡一生)

(米国、韓国、カナダ)

ビジネス短信 3f17a0faa3fd1b12