ゼロ排出航空実現に向け、新たな有識者グループ発足

(英国、米国)

ロンドン発

2022年04月28日

英国のグラント・シャップス運輸相とクワシ・クワルテング・ビジネス・エネルギー・産業戦略(BEIS)相は4月20日、ゼロ排出航空の実現に向け、企業、政府の有識者を集めたグループ「ゼロエミッションフライト(ZEF)デリバリーグループ」を発足外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますさせた。世界的なグリーンな航空へのシフトの中で英国がその動きをリードできるよう、ゼロ排出の航空機や空港のインフラ開発を支援するほか、関連法制についても検討を行う。

同分野に関して英国は、2021年初頭に開始した航空技術研究所(ATI)の「フライゼロ」プロジェクトや、2021年8月に発表された運輸省の「ゼロエミッション航空インフラ」プログラムを通じ、研究や実証、研究開発補助金の提供などを行ってきた。2022年3月には、ATIに対し今後3年間で、6億8,500万ポンド(約1,130億2,500万円、1ポンド=約165円)を拠出、グリーン航空技術の研究開発を推進することを発表している。さらに、イノベートUKを通じ、ネットゼロ目標達成に資する電動、自動飛行技術の開発向けに資金拠出している。

航空分野からの二酸化炭素(CO2)排出は、英国の排出量の約8%を占める(2019年)。英国政府は2021年10月に発表したネットゼロ戦略で、代替航空燃料(SAF)の商用化を加速するとしており、2030年までにSAFの割合を10%とすることを目標としている(2021年10月26日記事参照)。航空業界の企業や団体が参画するサステナブル・アビエーションも2021年6月、ネットゼロ達成目標に向けた中間目標を発表。航空業界で、温室効果ガス(GHG)を2030年までに2019年比15%、2040年までに同40%削減するとした。

関連企業の動きもみられる。英国電動航空機企業のバーティカルエアロスペースは2022年3月末、アイルランドのリース企業アボロンに販売した電動航空機VX4の500機の機体が、全て航空会社に対して提供されたことを発表した。提供先には、日本航空(JAL)、エアアジア、ブラジル大手のゴル航空などが含まれる。同社は2025年の運用開始に向け、欧州で認証手続きを進めている。英米に拠点を有する、燃料電池航空機開発企業ゼロアビアも2022年4月4日、米国カリフォルニア空港向けのグリーン水素補給インフラ開発に向け、米国のZEVステーションとの間で覚書を締結したことを発表している。

(山田恭之)

(英国、米国)

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