電力再国有化に向けた憲法改正案の下院最終案が確定、本会議の採決は4月17日に

(メキシコ)

メキシコ発

2022年04月13日

メキシコ連邦下院の憲法改正・エネルギー合同委員会は4月11日、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領が2021年10月1日に下院に提出した電力再国有化に向けた憲法改正案(2021年10月4日記事参照)の下院としての最終案を賛成多数で可決した。下院本会議の討議は4月12日に開始、翌13日にも採決が行われる予定だったが、下院政策調整委員会の決定により、採決は4月17日まで延期となった。

与党・国家再生運動(MORENA)のイグナシオ・ミエル下院院内総務は、最終案には2022年1月半ばから2月末まで開催されていた公聴会(2022年2月16日記事参照)で出された専門家の意見や野党側の提案も盛り込まれているとしているが、当初の大統領提出法案と比較して、わずかな修正や追加(添付資料参照)があるほかは、大きな変更が加えられていない。民間発電事業者より電力庁(CFE)の発電が優先されることや、改正発効時に民間事業者に対する許認可や電力売買契約を全ていったん取り消し、CFEが定める方法で国の発電能力の46%まで民間発電事業者に発電を認めるという内容も変わっていない。

大統領、野党議員は民意に背くと牽制

合同委員会の最終案採決では、47対37で連立与党側の賛成多数で可決したものの、憲法改正は本会議で出席議員の3分の2以上の賛成が必要となるため、野党側から57議員が賛成に回る必要がある。委員会審議では与野党の意見の溝は埋まることなく、野党の国民行動党(PAN)、制度的革命党(PRI)、民主革命党(PRD)、市民運動(MC)は全て憲法改正案に反対する意向を崩していない。

採決を17日まで延期した理由として、憲法改正に対する民間部門の賛成を取り付けるためとの与党議員の発言もあるが、日本の経団連に相当する企業家調整評議会(CCE)は11日付でプレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を出し、民間部門は与党との交渉を一切行っておらず、法の支配や明確なルール、投資における信頼感を醸成する効果的な公共政策を重視する民間部門の公聴会などにおける再三の声が何も反映されていない憲法改正案に対し、民間部門の強い懸念は変わらないとしている。

他方、AMLO大統領は12日、政権4年目の100日間の業績発表式典で「国会議員たちは、私企業、特に外国企業の利益を擁護する立場に立つのか、真に民衆や国家を代表する立場に立つのかを決めなければならない。そのときはもうすぐ来る。日曜日になれば、誰がどちらの立場かは分かるだろう」とし、憲法改正案に反対する議員は民衆の敵とのレッテルを貼ることにより、2024年の総選挙における国民の支持が気になる野党議員に対し、改正案への反対を抑制するような発言をしている(大統領府4月12日付プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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