欧州医薬品庁、新型コロナワクチン4回目接種の早急な実施は不要との見解

(EU)

ブリュッセル発

2022年04月08日

EUの医薬品規制当局である欧州医薬品庁(EMA)は4月6日、欧州疾病予防管理センター(ECDC)と共同で、新型コロナワクチンの2回目のブースター接種に関する声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。これまでのワクチン接種により得られた重症化や死亡するリスクへの予防効果が減退している、あるいは2回目のブースター接種(通算4回目の接種)に付加価値があるとの証拠はないとして、免疫機能が正常な60歳未満の年齢層に対する2回目のブースター接種は現時点では時期尚早との見解を示した。EMAのこうした見解は、1月の段階から変わっていない(2022年1月13日記事参照)。

今回の声明は、mRNAワクチン(米国ファイザーとドイツ・ビオンテック、米国モデルナの各ワクチン)を対象としており、2回目のブースター接種に関する現時点での必要性と潜在的な便益に関するEUを含む欧州経済領域(EEA)の共通の指針に向けた初期的な見解としている。

免疫反応が正常な60歳~80歳の年齢層に関しても、現状では重症化や死亡に至る確率は低いとし、こうしたリスクに対するワクチンの予防効果の実質的な減退を示す兆候はないことから、現時点では2回目のブースター接種の早急な実施は不要とした。今後も、減退の兆候の早期検知に向けて、疫学的状況やワクチンの予防効果に関するモニタリングを続けるとしている。ただし、80歳以上の年齢層に関しては、一般的な虚弱(ぜいじゃく)性やワクチンによる免疫反応の弱さ、重症化のリスクを考慮して、2回目のブースター接種を実施することはできるとしている。また、2回目のブースター接種が既に勧告されている免疫不全者に対するさらなる追加接種に関しては、まだ十分なデータが集まっていないとした。

今回の見解は、主にイスラエルのデータを検証したものだ。2回目のブースター接種による新たな安全性に関する懸念はみられず、1回目のブースター接種と同等の免疫効果が得られるとしている。また、長期的なデータはないものの、2回目のブースター接種による免疫効果の持続期間は、1回目のブースター接種による免疫効果の持続期間と同程度の可能性があるとしている。

秋冬に向け、全年齢層対象の2回目のブースター接種実施の可能性はあると指摘

今後の2回目のブースター接種に関しては、数カ月での予防効果の減退具合や感染状況にもよるが、新型コロナウイルスの季節性は明らかになっていないものの、一般に呼吸器系のウイルスは寒冷な季節に流行することから、今後の流行や秋冬に備えて、全ての年齢層に2回目のブースター接種が必要になる可能性はあるとした。なお、新たな変異株に対応した新たなワクチンに関しては、十分なデータが提供されておらず、こうしたワクチンの2022年夏中の承認のめどは立っていないことを明らかにしている。

(吉沼啓介)

(EU)

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