国内初のパーム油を使用した持続可能な航空燃料(SAF)実用化へ

(ブラジル)

サンパウロ発

2022年04月22日

ブラジル国営石油会社ペトロブラスのジェット燃料などを供給するビブラ・エネルジア(注1)と、中南米最大規模のパーム油製造企業であるブラジル・ビオ・フュエル(BBF)(注2)は4月11日、それぞれの公式サイトで、ブラジル初となるパーム油を使用した持続可能な航空燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel)の実用化に向けて協力することを発表した。

BBFは、アブラヤシから得られるパーム油を使って、2025年もしくは2026年にSAFの実用化を目指す。ビブラ・エネルジアは、BBFが製造するSAFを5年間購入する予定。SAFは、バイオマスや廃食油、排ガスなど原料の生産・収集から、製造、燃焼に至るまでに二酸化炭素(CO2)排出量を従来燃料より大幅に削減できることから、近年、注目が集まっている。

BBFは約20億レアル(約560億円、1レアル=約28円)を投資し、SAFの生産工程を確立する。ブラジル北部ホライマ州の南部の一部荒廃した土地に、パーム油の原料となるアブラヤシの再植林を行い、約4年でパーム油を得られるよう育てる。パーム油は、バイオ燃料を動力とするトラックで、北部アマゾナス州マナウス市のフリーゾーンに輸送し、同フリーゾーン内でパーム油を使用し、年間50万立方メートルのSAFや水素化植物油(HVO)(注3)を生産する(注4)。

ビブラ・エネルジアは2022年4月11日付の公式サイトで、マナウスフリーゾーンでの生産量は、自社がブラジルで供給しているジェット燃料〔ケロシン(注5)およびディーゼルベースの総量〕の2%を代替できる量に相当すると説明した。

ビブラ・エネルジアとBBFは、ブラジル北部地域で再生可能エネルギーを生産・供給することで、同地域に産業と雇用を生み出すこと、また、2026年までに12万ヘクタールの面積にアブラヤシを植え付けることで得られる年間60万トンの温室効果ガス吸収効果にも期待を寄せている。

写真 航空機に給油されるペトロブラス・ブランドのジェット燃料(ジェトロ撮影)

航空機に給油されるペトロブラス・ブランドのジェット燃料(ジェトロ撮影)

(注1)ビブラ・エネルジアは、ペトロブラス石油製品の流通などを担う。また同社は、ペトロブラスの自動車向けガソリンスタンド約8,300カ所を運営している。ビブラ・エネルジアが供給するペトロブラス・ブランドのジェット燃料は、国内シェア約7割を占める。ペトロブラスは、子会社だったBRディストリブイドーラを2021年7月に民営化し、企業名をビブラ・エネルジアに改名した。

(注2)BBFは、北部地域の持続可能な開発を目指し、2008年に創設された。ブラジル地理統計院(IBGE)によれば、2019年のGDPを地域別にみた場合、北部地域のGDPは全体の5.7%となっており、南東部の53%、南部17.2%、北東部14.2%、中西部9.9%に続く、最も低い割合になっている。BBFは既に、北部のアクレ州、アマゾナス州、ホンドニア州、ホライマ州、パラー州で6万8,000ヘクタールのアブラヤシを育成している。その他、熱電気発電所(うち半分は稼働済み)36カ所、アブラヤシの粉砕設備3カ所、バイオディーゼル生産設備1カ所を有している。BBFの資産は、合計で15億レアル。

(注3)ビブラ・エネルジアは、水素化植物油(HVO)を「グリーンディーゼル」とも表現している。

(注4)マナウスフリーゾーンでは、企業は、製品の製造に関して最低限履行すべき基礎製造工程基準(PPB)を満たせば、税制優遇措置が与えられる。具体的には、輸入税の減免、工業製品税(IPI)の免除など。詳細はサイト参照。

(注5)石油の分留成分の1つで、ジェット燃料などに使われるもの。

(古木勇生)

(ブラジル)

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