地方特別債の発行を大幅に前倒し、インフラ投資を加速

(中国)

北京発

2022年04月15日

中国の財政部は4月12日、地方特別債(専項債)(注1)の発行・支出状況について記者会見を行った。地方特別債を通じて調達した資金は、地方のインフラ投資などに重点的に使用されており(注2)、民間投資の呼び水としての投資押し上げ効果も期待されている(2022年3月8日記事参照)。

3月に開催された第13期全国人民代表大会(全人代)第5回会議で発表された、2022年の政府の重点取り組み(2022年3月8日記事参照)において、「有効な投資の積極的拡大」のため、地方特別債を3兆6,500億元(約73兆円、1元=約20円)発行することが記載されている。

財政部によれば、2022年の発行予定総額のうち、1兆4,600億元分については2021年12月末に前倒しで各地方政府に発行額が割り当てられた。2021年と比べ3カ月早い時期での第1回の割り当てとなった。

2022年3月末時点でそのうち1兆2,500億元分の債券が発行され、8,528億元がプロジェクト実施機関に支払われた。前倒し分は9月末までに全額が支払われる予定。2021年同期の債券発行額は200億元で、2022年は発行時期が大幅に早まっている。

3月30日には第2回の割り当てが行われ、建設プロジェクトについては割り当てが完了した。9月末までに、現時点で割り当てられている全額について債券が発行される予定となっている。

2022年の地方特別債による資金の重点的な支出分野としては、交通インフラ、エネルギー、農林業水利、生態・環境保護、社会的事業、コールドチェーンなどの物流インフラ、市政および産業園区インフラ、国家重大戦略プロジェクト、中・低所得者向け住宅供給プロジェクト、の9分野が挙げられている。具体的には、都市パイプラインや水利、情報インフラ、コンバージドインフラ(注3)、イノベーションインフラ(注4)への投資を推進するほか、食糧の貯蔵物流施設への投資も重点とする。

平安証券の鐘正生首席エコノミストは「国内外の金融政策において、(国・地域によって)引き締めと緩和の差異が拡大する中、中国がとり得る緩和手段も一層制約されている。安定した成長のために、財政政策がさらに積極的な効果を発揮する必要がある」と財政政策強化の必要性を指摘している(「中証網」4月13日)。

(注1)省、自治区、直轄市などが、収益性のある公益プロジェクト実施を目的として発行する地方債券。プロジェクトに対応する政府基金収入もしくはプロジェクトの収入により、元利返済する。

(注2)2021年は、総額の約5割が交通インフラ、市政および産業園区インフラに、約2割が農林業水利、エネルギー、コールドチェーン物流に投資された。

(注3)中国政府によれば、インターネット、ビッグデータ、人工知能(AI)などの技術を応用し、従来型のインフラ施設の転換・レベルアップを支援するもので、例としてスマート交通インフラやスマートエネルギーインフラなどを挙げている。

(注4)科学研究、技術開発、製品研究開発を支援する公益性を持つインフラ施設を指す。

(河野円洋)

(中国)

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