2022年はマクロ経済の安定をより重視、地方への財政移転を拡大

(中国)

北京発

2022年03月08日

中国の第13期全国人民代表大会(全人代)第5回会議で3月5日に草案が公表された「政府活動報告」(2022年3月8日記事参照)は、2022年の政府活動の重点分野として全9項目を挙げた。筆頭がマクロ経済の基盤安定化、次いで、市場主体の安定と雇用確保を図る取り組み、マクロ政策により注力という項目建てとなっており、2021年の同報告(2021年3月9日記事参照)以上に、マクロ経済の安定を重視する姿勢が見られる。9項目は以下のとおり。

(1)マクロ経済の基盤の安定化に力を入れ、経済の動きを合理的な範囲内に保つ。

(2)市場主体の安定と雇用の確保に努め、マクロ政策の実施に一段と力を入れる。

(3)揺るぐことなく改革を深化させ、市場の活力と発展の内生的原動力をより一層引き出す。

(4)イノベーション駆動型発展戦略を踏み込んで実施し、実体経済の基盤を強化・拡大する。

(5)揺るぐことなく内需拡大戦略を実施し、地域間の調和発展と新型都市化を推進する。

(6)農業生産に大いに力を入れ、農村の全面的な振興を促す。

(7)ハイレベルの対外開放を拡大し、貿易・外資の安定成長を推し進める。

(8)生態環境を持続的に改善し、グリーン・低炭素発展を推し進める。

(9)民生を確実に保障・改善し、社会統治を強化・革新する。

(1)について、財政面では財政赤字の対GDP比を2.8%前後に引き下げ(2021年の目標は3.2%前後)財政の持続可能性に配慮しつつ、中央から地方への財政移転を前年比18%増の約9兆8,000億元(約176兆4,000億円、1元=約18円)と大幅に拡大する。同時に、地方特別債による政府投資を拡大し、民間投資の呼び水にするとしている。

金融面では、マネーサプライ(M2)と社会融資総量の伸び率を経済成長率(名目)と一致させるとともに、資金が重点分野と脆弱(ぜいじゃく)部分へ一層投下されるようにし、金融包摂を強化する。

その他、企業の雇用安定・雇用創出への支援強化や、食糧や電力の供給確保、石油・ 天然ガスなどの資源探査・開発加速、経済・金融分野のリスク対処への取り組みを挙げている。

(2)では、製造業、小企業・零細企業、自営業者向けの減税・料金引き下げ支援策の継続や、未控除仕入れ増値税の還付、新型コロナウイルスの影響を受けた業種・企業への融資支援継続、大手プラットフォーム企業に対する手数料の引き下げ指導、法的根拠のない料金・費用の徴収を取り締まる特別キャンペーンの実施などを挙げている。また、飲食、宿泊、小売り、観光、旅客輸送など雇用吸収力が大きく、新型コロナウイルス拡大の影響が大きな業種へ傾斜した支援を行う。失業保険や労災保険の保険料引き下げを延長する。

対外開放に関する(7)では、越境ECに関する国外倉庫設置支援や良質な財・サービスの輸入の積極的拡大がある。また、外資系企業の内国民待遇の徹底や、外資系企業の投資奨励分野の拡大、ミドル・ハイエンド製造業、研究開発、現代サービス業(注)への投資、中・西部地域と東北地域への投資拡大を支援するとしている。

(8)では、少子高齢化対策として3歳未満の乳幼児の保育費用を個人所得税の特別付加控除に組み入れるとしている。

国務院研究室の向東副主任は記者会見で、財政赤字の対GDP比は引き下げられたものの、支出規模は2021年比で2兆元以上拡大する予定であることなどから「積極的な財政政策という方向性は変わっていない」とした。

(注)情報通信・ソフトウエア・情報技術、金融、不動産、ビジネスサービス、教育など。

(河野円洋)

(中国)

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