ケリー米大統領特使がメキシコ訪問、電力再国有化に向けた憲法改正案の見直し求める

(メキシコ、米国)

メキシコ発

2022年04月07日

米国のジョン・ケリー気候変動担当大統領特使は3月31日、米国企業家らとともにメキシコ市のメキシコ大統領官邸を訪れ、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領らとメキシコのエネルギー改革について協議した。会談には、米国側出席者として、エネルギー部門からインベナジー、センプラ・エナジー、タロス・エナジー、AESなどが、自動車産業からはゼネラルモーターズ(GM)、フォードの幹部が参加し、ケリー特使、ケン・サラサール駐メキシコ米国大使、9社の米国企業がAMLO大統領と4時間あまりにわたって会談した。

ケリー特使は、協議の結果、4月上旬に下院で審議開始予定の電力再国有化に向けた憲法改正案について、サラサール米国大使が率いるワーキンググループを組織することとなったと説明した。同ワーキンググループの目的を「電力分野におけるエネルギー改革がより良い方向に前進するように取り組むこと」と説明している(現地紙「レフォルマ」3月31日)。

ケリー特使は現地紙「レフォルマ」の取材に対し、「会談のなかで、われわれはクリーンエネルギーへの転換が必要だということであらためて一致した」とし、「(クリーンエネルギーの推進のために)明らかに取り組むべき点がいくつかあり、ワーキンググループのメンバーはエネルギー改革がエネルギー転換を推し進め、民間投資を制限するものにならないように働きかけていく」と述べた(現地紙「レフォルマ」4月1日)。また、「AMLO大統領は、水力発電所の近代化を望んでいる」とし、会談においてクリーンエネルギー分野への投資についても米国企業と協議する意向を明らかにした、とも語っている。なお、その後下院では、4月4日に環境委員会で審議が開始された。環境委員会では政府提出法案に若干の修正のみ加えられたが、同委員会としては賛成多数で可決した。

米国政府はこれまでも複数回にわたり、メキシコのエネルギー改革への懸念を表明してきたが(2022年2月14日記事参照)、憲法改正案の下院における審議が4月上旬にも始まることから、働きかけを強めていた。米国通商代表部(USTR)が3月25日付で発表したプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、キャサリン・タイ代表が「メキシコのエネルギー政策の内容が悪化の一途をたどっていることに深刻な懸念を有している」と記載された。また、3月31日にはタイ代表からAMLO大統領に向けて書簡を送り、電力再国有化に向けた憲法改正案の内容が米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に違反するもので、改革がこのまま実現した場合には「USTRは対抗措置を取る用意がある」と伝えた、と報道されている(現地主要各紙)。

(松本杏奈)

(メキシコ、米国)

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