ケリー気候変動担当米大統領特使がメキシコ訪問、USMCA順守を求める

(メキシコ、米国)

メキシコ発

2022年02月14日

ジョン・ケリー気候変動担当米国大統領特使は2月9日、メキシコのメキシコ市でアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領、マルセロ・エブラル外相と会談し、気候変動対策における両国の協力、メキシコのエネルギー改革について協議した。

ケリー特使はエブラル外相との会談後の記者会見で、「メキシコは風力、太陽光、地熱、水力そして化石燃料の全てに恵まれた国」とし、「われわれは共に世界の変革をリードすることができる」としたうえで、メキシコの電力再国有化に向けた憲法改正案について「われわれは完全にメキシコの主権を尊重しており、AMLO大統領が彼と国家にとって重要な、いくつかの改革に着手していることを認識している」と述べ、「われわれが望んでいるのは(1月にメキシコを訪れた)ジェニファー・グランホルム米国エネルギー省長官が言ったとおり、共に市場の開放および市場競争力を強化することだ」と述べた。

AMLO大統領が推進するエネルギー改革に対する米国政府の姿勢については、米国エネルギー省のグランホルム長官が1月下旬に訪問した際に、米国企業の投資に与える負の影響について懸念を伝えたと発表されていた(1月24日記事参照)。しかし、2月4日にケン・サラサール駐メキシコ米国大使が、与党・国家再生運動(MORENA)の下院議員との会合後に応じたインタビューで「電力産業法は2013年以降、見直されてこなかった」ことから、「AMLO大統領が『国民の利益のために改正しよう』と言うのは理にかなっている」と、エネルギー改革を容認するとも取れる発言をしていた(現地紙「ミレニオ」2月4日)。その後、2月8日に在メキシコ米国大使館のプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、「米国政府はメキシコのエネルギー改革に何度も懸念を表明してきた」と発表されはしたが、今回のケリー特使の発言により、米国政府が初めて公の場で、メキシコ政府に対して市場の開放と競争の担保を要求したことになる。

同日、ケリー特使はAMLO大統領と、大統領官邸で3時間以上にわたり非公開の会談を行った。会談終了後、ケリー特使はロイターの取材に対し、再生可能エネルギーの利益について「多くの合意点を見いだした」一方、「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に抵触せず、開放的で競争力のある、市場の妨げにならないような改革を行うことが重要だと表明した」と述べた(ロイター2月10日)。

AMLO大統領は電力庁(CFE)を守る必要性を強調

AMLO大統領は2月10日の早朝記者会見で、ケリー特使との会談を「良い会談だった」と評し、ケリー特使に「われわれはクリーンエネルギーには賛成だが、汚いビジネスには反対だ」と「丁重に話した」ことを明らかにし、「国営企業である電力庁(CFE)のおかげで、国内の農村部まで電力供給がいきわたった」ことから、「その基盤を揺るがし、弱体化させ、破壊させることがないよう、CFEを守らなければならないことを伝えた」と述べた。

(松本杏奈)

(メキシコ、米国)

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