ADB、バングラデシュの2021/2022年度の経済成長率を6.9%と予測

(バングラデシュ)

ダッカ発

2022年04月18日

アジア開発銀行(ADB)は4月6日、バングラデシュの2021/2022年度(2021年7月~2022年6月)の実質GDP成長率は6.9%と予想外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした結果を発表した。調査対象のアジア大洋州地域46カ国・地域の平均の同成長率は5.2%で、南アジアの中でバングラデシュはモルディブ(11.0%)、インド(同7.5%)に次ぐ高い成長率見通しとなった。主な背景として、新型コロナウイルス禍による経済対策に伴う政府の歳出増加に加えて、経済を支える輸出の堅調な増加(2022年4月8日記事参照)や民間消費の拡大、わずかながらも回復基調にある農産物の生産拡大が挙げられている。他方、国際的な食糧高騰などに伴って上昇傾向にあるインフレ率は6.0%(前年度から0.4ポイント上昇)、年度累計の郷里送金は218億ドル(前年度比12.0%減)を予測した。2022/2023年度の経済成長率は7.1%と予測している。

バングラデシュのマクロ経済を支える郷里送金については、2021年12月から前月比で微増傾向にある。2022年1月には現金インセンティブの割合引き上げ(送金額の2.5%相当の付与)が講じられているものの(2022年2月9日記事参照)、2月単月の郷里送金は14億9,447万ドル(前月比12.3%減)と再び減少に転じていた(添付資料表1参照)。3月は18億5,997万ドルと前月から増加したが、これは国外出稼ぎ労働者がラマダン(2022年4月4日記事参照)前に故郷の家族に送金したことを要因とする見方がある(「フィナンシャル・エキスプレス」紙)。また、年度累計で過去最高額を記録した前年度(2020年7月~2021年6月)との比較では、3月末時点(2021年7月~2022年3月の累計)の金額は17.7%減の状況だ。一方、外貨準備高は2月末時点で輸入額(注)の約10.1カ月分に相当する約459億ドルと、高水準を維持している(添付資料表2参照)。

ADBは上記調査で、2021/2022年度の郷里送金の減少および減少予測の理由として、国境を越える人の移動の再開に伴う、統計に反映されない違法送金の増加を挙げている。郷里送金の減少は、民間消費の拡大に影響を及ぼす可能性もあると指摘している。また、今回のバングラデシュの経済成長予測に当たり、ロシアのウクライナ軍事侵攻による国際経済の低迷や、石油価格や輸入財の高騰、輸出の低迷といった要素が今後、下振れリスク要因になる可能性があるとの見方も示している。

さらに、同調査では、バングラデシュの政策課題として、気候変動に対する脆弱(ぜいじゃく)性を指摘している。「グローバル気候リスク指数2021(CRI)」では2000年~2019年に世界180カ国中7番目に自然災害の影響を受けやすい国となっている。また、バングラデシュ政府が2021年に発表した「第8次5カ年計画(2021年~2025年)」では、気候変動により、2041年会計年度までに毎年、GDP比1.3%に相当する経済損失が継続的に発生する可能性があると予測している。これに対し、同調査では、気候変動に強いインフラやサービスの整備を必須としており、グリーン投資やグリーンテクノロジーへのインセンティブ提供などといった金融政策の設計が重要と述べている。

なお、ADBは3月31日、バングラデシュの経済発展や貿易促進に向けた税関・輸出入手続きに関する政策の改革のため、同国政府への1億4,300万ドルのローン供与と技術支援についても発表した(「デーリー・スター」紙)。

(注)2020/2021年度(2020年7月~2021年6月)の輸入額確定値(約544億ドル)。

(山田和則、安藤裕二)

(バングラデシュ)

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