大蔵公債省が2022年経済成長率見通しを4.1%から3.4%に引き下げ

(メキシコ)

メキシコ発

2022年04月08日

メキシコ大蔵公債省は4月1日、連邦予算財政責任法の第42条に基づき、大蔵公債省が同日までに国会に提出することが義務付けられている、2023年予算策定のための経済・財政に関する政府見通しを明らかにする「事前基準」PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を、同省ウェブサイトで公表した。その中で、2022年のGDP成長率見通しを従来の4.1%から3.4%へ引き下げた(添付資料表1参照)。見通し引き下げの理由としては、新型コロナウイルスの影響で国際的に発生した需給ギャップの影響により生産面での制約が持続していること、食糧価格やエネルギー価格の上昇によりインフレ率が高止まりしていること、ロシア・ウクライナ危機によるエネルギー価格の上昇が高インフレの収束をさらに難しくしていること、などを挙げている。

経済成長低迷による付加価値税(IVA)の減収や、ガソリン・ディーゼル価格を低く抑えるための生産サービス特別税(IEPS)を通じた補助政策(注)の影響により、税収は当初想定の前年比6.4%増から2.4%減に転じるとみている。他方、原油価格の大幅な上昇により石油収入が大きく増えて税収減を補うとみており、総合財政収支やプライマリー収支には影響を与えず、債務残高も増加させないとみている。

民間部門と比べると甘い見通し、税収確保が課題

中央銀行が4月1日に発表した内外の37民間シンクタンクに対するアンケート調査によると、2022年の民間シンクタンクによる経済成長率見通し平均値は1.76%で、政府見通しの半分程度だ。2023年の見通しも民間平均は2.08%と、政府の3.5%とは大きな差がある。政府見通しは、中銀の3月2日時点の見通しと比較しても、かなり楽観的な数字だ(添付資料表2参照)。

経済成長率が想定よりも低くなった場合、税収はさらに減少する懸念がある。大蔵公債省が3月30日に発表した2022年1~2月の歳入統計によると、同期間に石油収入が前年比実質6.2%増、非石油収入が1.9%減となり、非石油収入のうち税収は0.7%の減少だった(添付資料表3参照)。税収のうち、ガソリン・ディーゼルの販売価格を抑えるためにIEPSの収入が30.7%減(燃料だけに限定すると60.5%減)と大幅に落ち込む半面、所得税(ISR、法人と個人の合計)が10.4%増と大きく伸びたため、IEPSの減収を補った。ISR増収の背景には、個人事業主や零細企業に対する簡易税制(RESICO)の導入(2021年9月10日記事参照)、連邦労働法改正による違法な人材派遣を通じた脱税防止、宅配アプリなどのデジタルプラットフォームを活用する個人事業主への源泉課税などの徴税強化策が奏功したとみられている。他方、IVAは10.0%減少した。経済活動低迷による税収減を補うため、今後も国税庁(SAT)による徴税強化が行われるとみられ、進出日系企業に対する税務調査の増加なども懸念される。

(注)燃料販売における生産サービス特別税(IEPS)の課税を、原油価格の上昇に応じて減額、あるいは免除し、全額免除しても燃料価格を抑えられない場合は課税額をマイナスとし、実質的な補助金を支給して価格を抑える措置。4月2~8日はIEPSを全額免除した上で、レギュラーガソリンに1リットル当たり1.9664ペソ(約12円、1ペソ=約6.2円)、ハイオクガソリンに同1.1642ペソ、ディーゼルに同3.1850ペソの補助金を支給している(4月1日付官報公布省令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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