広州炭素排出権取引所、カーボンニュートラル認証取得事例をまとめた報告書を公開

(中国)

広州発

2022年03月29日

広州炭素排出権取引所(以下、「広州取引所」)は3月12日、中国国内のカーボンニュートラル認証事例について取りまとめた報告書「カーボンニュートラル2021」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(以下、「報告書」)を公開した。

報告書は、公開情報で明らかになっている範囲で、カーボンニュートラル認証(注1)取得事例を収集・分析したもの。広州取引所が認証を発行した案件のほか、中国国内の他機関が認証したものも分析対象に含まれている。

報告書によると、中国国内の92の組織が2021年内にカーボンニュートラルの認証を取得した。そのうち、半数以上を金融機関(注2)が占めた(添付資料図1参照)。

企業のカーボンニュートラル達成に当たっては、自社が排出する二酸化炭素(CO2)の削減を図った上で、未達成分については排出枠やカーボンクレジット購入で相殺するのが一般的だ。実際に92の認証取得組織全てが、排出枠とカーボンクレジットのいずれか、あるいはその両方を購入していた。排出枠とカーボンクレジット購入による相殺分を足し合わせた「オフセット量」の総量を業態ごとに比較すると、上位から順に製造業、産業園区、ショッピングモール・ホテル・オフィスビルとなった(添付資料図2参照)。

認証取得の動きは、中国に進出する日系企業(および現地に所在する日系資本が入った企業)にもみられる。パナソニック関連会社の松下電気機器(北京)のウェブサイトによると、同社は余熱回収や空調の最適化、太陽光発電の活用などの各種排出削減措置とカーボンクレジットなどを活用し、2020年度通年度ベースでカーボンニュートラルを達成。2021年8月に正式に認証を取得した。さらに広州取引所の2月17日付発表によると、豊田通商が出資する深セン市の自動車販売会社「深セン大興豊通レクサス自動車販売サービス」が、2021年通年ベースでのカーボンニュートラル認証を取得。太陽光発電の導入や廃バッテリーの再利用、カーボンクレジット活用などに取り組み、中国で初めて自動車ディーラーとしてカーボンニュートラルを達成した(「深セン特区報」2月25日)。

中国政府は2021年10月、2030年までのカーボンピークアウトと2060年までのカーボンニュートラルの達成に向けた具体的な取り組み方針などを発表(2021年10月28日記事参照)。地方政府においても、カーボンニュートラル認証取得企業に対する補助金制度を発表する動きもみられ、目標達成に向けた企業の自主的な取り組みを後押ししている。

(注1)企業・団体などの特定期間におけるカーボンニュートラル達成を、第三者機関が認証するもの。「GHGプロトコル」や「ISO14064」などに代表される標準・規格に基づいて二酸化炭素排出・削減量を算出し、認証の判断を行う。認証取得により、自社の脱炭素の取り組みをステークホルダーにアピールする効果などが期待できる。

(注2)金融機関の各支店、部門単位で取得した認証をそれぞれ1件としている。

(小野好樹)

(中国)

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