インド人民党(BJP)、5州のうち4州の州議会選挙で勝利

(インド)

ニューデリー発

2022年03月17日

インド国内の5州で2月から3月上旬にかけて州議会選挙が実施され、開票の結果、ナレンドラ・モディ首相が率いるインド人民党(BJP)が4州で第1党となった。州議会選挙があったのは、北部のウッタル・プラデシュ(UP)州(人口2億3,788万人、2020年末推計)、パンジャブ州(3,014万人)、ウッタラカンド州(1,125万人)、北東部のマニプール州(309万人)、南西部のゴア州(159万人)の5つの州。このうち、BJPはパンジャブ州を除く4州で勝利した。

各州の州議会の任期は5年間。選挙では小選挙区制が採用されている。UP州では各選挙区が7つの地域に分類され、それぞれ投票日が設定されたほか、州によって選挙の投票日が異なったが、開票作業は3月10日に一斉に実施された。

中でも注目を集めたのが、インド国内で最も多い人口を抱えるUP州の選挙だ。1985年以降のUP州議会選挙では勝利する政党が毎回変わっていたが、今回はBJPが全403議席のうち255議席を確保し、前回選挙に引き続き勝利を収めた(添付資料表1参照)。最も有力な対抗馬とみられていた社会党(サマジワディ党:SP)は前回の議席数から倍増となる111議席を獲得したものの、当初予想されていたほど得票が伸びなかった。選挙前は、BJP政権下の中央政府が2021年11月に農産物流通促進法など新農業関連法の撤廃を余儀なくされる(2021年11月24日記事参照)など、BJPに対する農家の支持離れが一部で危ぶまれていた。しかし、2018年12月に始まった中央政府による農家向け最低所得保証制度の一環で、同州内農家2,400万世帯にも直接現金給付を進めていたことや、ヨギ・アディツアナス州首相が2021年12月から新型コロナウイルス対策の救済措置として、州内の貧困層1億4,500万人に穀物や食用油などの現物支給を行ったことで、BJPの支持基盤は揺らがなかったと現地では報じられている。

BJPはウッタラカンド州で全70議席中47議席(添付資料表2参照)、マニプール州でも全60議席中32議席(添付資料表3参照)とそれぞれ過半数を獲得した。ゴア州では、BJPが前回選挙より7議席増やして20議席を獲得したが(添付資料表4参照)、全40議席の過半数に及ばなかったため、野党や独立系議員への働きかけを通じて政権与党の座を維持するとみられている。

他方、パンジャブ州(全117議席)では、これまで政権を握っていた国民会議派(INC)が18議席と大きく議席数を減らしただけでなく、BJPと連携して前々回の選挙を制したシーク教政党のアカーリーダル党(SAD、3議席)やBJP(2議席)も伸び悩んだ。代わりに92議席を獲得して躍進したのは、デリー準州のアルビンド・ケジュリワル州首相が率いる地域政党の庶民党(AAP)だ(添付資料表5参照)。現地メディアは、医療保健や教育の充実などを公約に掲げたAAPが、既存の主要政党に不満を持つ有権者の票を集中的に集めたと分析している。AAPがデリー準州以外の州議会で政権を握るのは今回初めてとなった。

BJPが今回、4つの州で州議会選挙を制したことは、同党にとって2024年の国政総選挙に向けた強力な追い風となったとみられている。インド全体では、全28州・8連邦直轄地のうち、BJPが州議会で政権を握るのは、モディ首相の地元グジャラート州を含む12州、INCが2州(ラジャスタン州、チャッティースガル州)、APPが2州(デリー準州、パンジャブ州)となった。これら3つの政党のほかは、複数の州の政権を握っている政党はない。なお、2022年は年後半に北部のヒマーチャル・プラデシュ州とグジャラート州でも州選挙が実施される予定だ。

(広木拓)

(インド)

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