ロシア軍事侵攻、ウクライナ日系企業に深刻な影響

(ウクライナ、ロシア)

ワルシャワ発

2022年03月04日

ジェトロはロシアによるウクライナの軍事侵攻を受け、2月28日から3月2日にかけて、在ウクライナ日系企業向けに緊急アンケートを実施した。回答企業13社全て(100%)が「すでに悪影響がある/悪影響が予想される」と回答した。

具体的な影響(複数回答)では、ウクライナ国内での販売停滞、減少への影響(69%)、物流の混乱/停滞(69%)、スタッフの労務管理の困難(69%)が最多となり、取引先への支払いや売掛金回収など決済への影響(54%)、対ウクライナのビジネス方針の変更(54%)、通関現場の混乱(46%)、為替レートの下落に伴うコスト増、販売価格への影響(46%)、資金調達の困難(31%)の順となった。各社とも、従業員の安全確保を優先に対応するために、休業や工場操業の一時停止しているという声が多かった。

対策としては、輸入貨物の工場出荷を停止するなどの在庫の最小化、人道支援物資の供給の検討のほか、従業員の安全確保に関する声が多かった。具体的には、キエフ市外への退避や、SNSアプリで緊急共同アカウントを開設し、安否確認を実施する事例があった。

今後半年から1年後の事業見通しでは、わからないが62%と最多だった一方、現状維持が23%、縮小が15%に上った。拡大および撤退は0%だった。2022年1月19~25日に実施したウクライナ情勢緊迫化の影響アンケート調査(2022年1月26日記事参照)では、今後のビジネス展望について拡大=60%、維持=40%、縮小・撤退=0%だった。今回のロシアの軍事侵攻が日系企業のウクライナ・ビジネスへの取り組みに深刻な影響を与えたといえる。

わからないの理由としては、ウクライナ情勢の先行きが不透明なこと、全面戦争は予想外だったこと、などが挙がった。現状維持の理由としては、現在の状況下では現地スタッフの解雇はできない、まずは現状回復を目指すという声があった。縮小の理由としては、現下の経済環境において需要の減少は避けられず、またオペレーションが正常化するためには時間がかかるという見方があった。

緊急アンケートは、ウクライナ日本商工会の協力の下、会員企業24社を対象に実施し、13社から回答を得た。回答企業のうち、製造業は2社、非製造業(メーカーの販売会社を含む)は11社だった。

(石賀康之)

(ウクライナ、ロシア)

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