ウクライナ情勢緊迫化の影響アンケート、6割が事業拡大を見込む

(ウクライナ)

ワルシャワ発

2022年01月26日

緊迫化するウクライナ情勢下で、現地の日系企業の過半数はビジネスへの影響はないとするものの、輸入品の販売不調や駐在員の退避検討など先行きの不透明感が高まっている。他方、市場のポテンシャルの大きさを評価し、今後の展望に期待を寄せる企業も多い。

ジェトロは在ウクライナ日系企業を対象に、昨今のウクライナをめぐる情勢緊迫化によるビジネスへの影響に関するアンケート調査を実施した。ウクライナにおけるビジネスへの影響について、「なし」と回答した企業の割合は60%(6社)、「あり」が40%(4社)となった。影響ありと回答した企業からは「需要減」「輸入品を扱うため外国為替評価に影響が出ている。取引先の購買先送りで売り上げに影響がある」「問題がエスカレートするにつれ、状況報告業務や退避検討といった業務が増加。もともとウクライナのポテンシャルに比して日本では市場としての評価が低いので、駐在員としてはまず国を知ってもらう、訪問してもらうところから始めるが、現在は安全保障の問題が悪目立ちしている」といったコメントが寄せられた。

ウクライナにおける今後のビジネス展望について、「拡大する」と回答した企業の割合は60%(6社)、「現状維持(様子見)」は40%(4社)となった。「縮小・撤退する」と回答した企業はなかった。拡大すると回答した企業からは、「EUに加盟した中・東欧諸国へ製造業をはじめとする多くの日本企業が進出したように、ウクライナの安保状況が改善し、EU、ロシアとの関係において一定の経済・貿易ルールが確立されれば、ウクライナ自体の市場の大きさもあって魅力的なビジネス機会を創出できると考える」「ウクライナは特に食糧輸出、インフラプロジェクト、ITリソースの観点で日系企業にとっていまだ手付かずのニッチな存在であり、新型コロナウイルス感染終息後の新たなビジネスの展開が期待される」「日本-ウクライナ間の輸出入トレードにおいて食品、化学品、消費財など多くの商材の需要が拡大している」「自動車輸入などの案件が増えており、今後サービスの拡大を検討する」とウクライナ市場の潜在力に期待するコメントがみられた。一方、「金融機関からの評価が低くなる。国の一部が紛争地帯のために日本企業が参入できない」などの懸念が寄せられた。

今回の調査は、2022年1月19日から25日にかけて実施。ウクライナ日本商工会に所属する民間企業24社に協力を依頼し、41.7%に当たる10社(本邦企業の海外支店など4社、本邦企業が100%出資した現地法人4社、その他2社)から回答を得た。進出日系企業は、大手商社や自動車・建機・工具などの販社のほか、たばこ生産、円借款による社会インフラ整備事業がある。

(石賀康之)

(ウクライナ)

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