インド・オーストラリア両首脳、包括的戦略的パートナーシップの重要性を再確認

(インド、オーストラリア)

ニューデリー発

2022年03月25日

インドのナレンドラ・モディ首相は3月21日、オーストラリアのスコット・モリソン首相とオンライン形式で会談した。両首脳がオンライン形式で会談するのは2021年6月以来2回目だ。両首脳は前回会談で発表した「包括的戦略的パートナーシップ(CSP)」(2020年6月12日記事参照)を軸に両国関係をさらに深めていくことを再確認し、経済やエネルギー、安全保障など幅広い分野での協力をうたった共同声明を発表した。

経済分野では、2021年10月に交渉が再開した包括的経済協力協定(CECA、2021年10月1日記事参照)の協議が順調に進んでいるとして、早期の暫定合意に加え、2022年末までに最終的な合意も目指すことをあらためて表明した。また、インド企業がオーストラリアの顧客にITサービスを提供して得た収入が、インド国内で課税対象となるだけでなく、オーストラリア国内でも印豪租税条約(DTAA)でのロイヤルティーとして二重課税される問題が発生していることを受け、同サービスの課税をめぐる課題の早期解決も図りたいとした。

エネルギー分野では、気候変動やエネルギー安全保障への対策として、持続可能なエネルギーを推進していく方針を再確認した。両国は超低コストの太陽光発電とクリーンな水素の製造や普及拡大を目的として、両国のエネルギー担当相が参加するエネルギー対話の場で新・再生可能エネルギー技術に関する基本合意書を2022年2月に結んでおり、今回の共同声明でもその重要性を強調した。

安全保障分野では、インド太平洋地域の安全保障に係る情報共有を図り、連携を進めることで合意した。ASEANを中心とするアジア大洋州地域で各国の国家主権や領土保全を尊重する重要性に言及したほか、両国に日本、米国を加えた4カ国で構成するクアッド(QUAD)の枠組みを通じて同地域の安定と繁栄に貢献することを強調した。なお、両首脳はウクライナにおける紛争や人道的危機についても深刻な懸念を示し、戦闘行為の即時停止をあらためて求めた。

両国の連携強化の一環として、モリソン首相は今回の会談を前に、スタートアップなどが集積するインド南部の都市ベンガルールにオーストラリア領事館を新設する意向を表明している。現在、オーストラリア政府がインド国内で公館を置いているのは、ニューデリー、ムンバイ、チェンナイ、コルカタの4都市だ。なお、インドの在オーストラリア公館は首都キャンベラのほか、シドニー、メルボルン、ブリスベン、パース、アデレードの各都市に領事館をそれぞれ配置している。

(広木拓)

(インド、オーストラリア)

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